第46章 Zero-零を受け継ぐ者たち-
「俺は今、あんたの身体の中の“血液”の致死量を下げてる。あんたの身体を動かしてるその“血”があんたの中に満ちていれば満ちてるほどあんたを死に近付けるんだ」
ダンッ
蒼生は床に手を付いて苦しそうに呼吸をする。
「蒼ちゃん…!!」
その姿を見て霙が叫ぶ。
「キツいだろ?どうしようもねえんだ。
致命的な気分だ。わかるぜ」
掌に溢れる血を一気に飲み干す。
「俺と同じだ」
蒼生は床に倒れた。
「そろそろかい。アンタ俺をナメてたろ?喋るコトも雰囲気も俺下っ端っぽいんだよなァ。でもな、いいんだ別にそれで。昔はけっこう気にしたモンだけどな。最近じゃそれも俺のいいとこじゃねえかって、自分に言い聞かせるようにしてんだ」
二重丸が線で繋がった様な形状の弓矢を手首のブレスレットから取り出したナックルヴァール。
「暗いって?そんな所も俺の致命的なトコさ」
「下っ端の癖によく喋るな、お前。」
すると蒼生は潙坐凪で自分の肩を斬った。
「!」
驚くナックルヴァールの視界から消え、刀を振り下ろす蒼生。
二人はバッと間合いを離す。
「“血”の致死量を下げるってのは要は“血”が体の中に沢山あると死ぬって話だろ?それなら“致死量以下”になるまで血を抜けばいいだけの話だ」
首筋から噴き出す血を片手で押さえる。
「…ムチャクチャしやがる…けどそんな単純なハナシじゃねえよ。アンタぐらいの体格なら体重60㎏かそこらだろ」
「いいトコ突くな。62㎏だ」
「㎏当たりの血液量の概算値は約65.7㎖、62㎏なら約4073㎖、4ℓちょいだ。その半分の2ℓを失えばアンタは失血死する。そしてアンタの“血液”の今の致死量は約1.6ℓ。つまりアンタは“自分が死ぬまで血を抜かなきゃ自分の血に殺される”のさ」
「…ほんとによく喋るな」
「今どうやって立ってる?そろそろ自分が立ってるのか倒れてるのかも分かんなくなってきてるんじゃないのかい?」
「なるほと…参った。この血を止めるには…どうしたらいいんだろうな…なァ!御影!」
叫んだ瞬間、背後から大量の赤い湯が滝の様に落ち、蒼生を呑み込んだ。
「あの男の影から見てたか?
御影の湯は血と霊圧を搾り出す湯」
「!」
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