第46章 Zero-零を受け継ぐ者たち-
「──この『爲坐凪』は失敗作だ。斬れ味が良すぎて刃がなめらか過ぎて幾ら斬っても刃毀れしない、血の一滴もつかない。そして何よりこいつを収める鞘が創られない。これじゃ刀として成立しないから爲坐凪を保管して俺は新たに『爲坐波』を創った」
残念そうに爲坐凪を見つめる。
「まさかこいつを使う日が来るなんてな…」
そして視線をユーハバッハへと向ける。
「よォ、久し振りだな。
漸くてめぇをぶった斬ることができる」
ドクンッ
「!?」
突然、体に異変を感じて蒼生の視界がぐらりと揺れた。
「…まだだなァ…。まだこの位じゃア…致命的じゃアねえぜッ…」
「…………、…どうなってる…?」
額からは嫌な汗が止まらない。
「俺が陛下に拾われたのは…ただひたすらに死ななかったからさ…みっともねえ能力だろ…?大嫌いさ、この能力のことを考えると…いつだって俺は致命的な気分になるんだ」
致死量
物質を生物が摂取した際
摂取量が一定を超えると死に至る
これを“致死量”と言う
“致死量”は
生物の種類・成長段階・物質の摂取方法・生物各個体の摂取時期等により異なるため
正確な値を求めることは
不可能であり
そのため 目安として
“半数致死量”(物質をある状態の生物に与えた場合その半数が死に至る量)という概念が一般的には用いられる
その量は
フグ毒として知られるテトロドトキシンで0.01㎎/㎏
トリカブトの毒であるアコニチンで0.1㎎/㎏
ニコチンで1〜7㎎/㎏
カフェインで200㎎/㎏
ビタミンCで1200㎎/㎏
「俺の聖文字は“D”、力の名は致死量(ザ・デスディーリング)”。指定した物質を摂取した時に100%死に至る“完全致死量”を正確に弾き出し、その量を自在に上下させる事ができる」
「…何だと…?」
苦しそうな表情でナックルヴァールを見る。
「よく分かんねえよな。俺も最初はそうだったぜ。でもアンタはいいよ、分かんねえままでいいんだ。これから死ぬのに分かったとこりでな」
ナックルヴァールが手についた血を舐め取ると…
ガクンッ
「!!」
蒼生は膝から崩れ落ちた。
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