第46章 Zero-零を受け継ぐ者たち-
琉生は片足を振り上げた。
「甘いと言っている!!!」
「!?」
振りかぶった足はヴァルキリーの持つ鉾に防がれる。
琉生は顔をしかめてその場から飛び退いた。
「…いやァ〜厳しいっスねぇ」
「しっかりしなさいよ」
「斬られた所、大丈夫スか?」
「あんたに心配されたくないわ」
詩調は床に向けて刀を軽く振った。
すると氷の巨人兵が形を変えて完成する。
「ほう、でかいな」
「………………」
「無言でこっち見てんじゃないわよ。気味の悪い奴ね。言いたいことがあれば言いなさいよ」
「でかいから何だ?と言っている」
ペルニダの言葉はリジェが通訳する。
パキンッ
「!」
氷の砕ける音がして詩調は氷の巨人兵を見上げた。
太陽に当たっても溶けない氷の巨人兵が何故か頭から砕けていく。
「今、『霊王宮が落ちるかも知れない』と思ったか?」
「!!」
「遅いよ」
リジェがマントを脱ぎ捨てると巨大なライフルが現れる。
「戦いに敗ける側はいつだって理解も遅けりゃ反応も遅いんだ」
詩調に狙いを定めた。
「陛下がここに踏み入った時に霊王宮はもう落ちてたのさ」
ドンッ!!
リジェは氷の巨人兵から此方に視線を戻した詩調の一瞬の隙をついてライフル銃を撃った。銃口から発射された弾丸は詩調の頭を撃ち抜いた。
風穴を開けられた詩調は体のバランスを崩し、ゴトンッという音を立てて地面に倒れる。頭から流れる赤い血が床を染めた。
「馬鹿者!!そんな所で殺す奴があるか!
陛下の通り道だろう!さっさと片付けろ!!」
「だってさ。助けてよペルニダ」
「……………」
ペルニダの能力で詩調の体は折り畳まれる。
その行為は残忍で非道。
肉塊が無造作に投げ捨てられた。
「あっけないものだな。
こんなものが零番隊か」
「今までいたかい。
僕らの前であっけなくなかった奴なんて」
リジェは浮かぶ円盤にライフルで狙いを定め、次々に撃ち落とす。
「───これで邪魔なものは全て落ちた」
ユーハバッハに跪く。
「お通り下さい、陛下」
だが次の瞬間、霊王宮の風景が一瞬にして変わる。
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