第45章 Neglecti-気づかないふり-
「人を探している」
「人?」
「あたしと同じ三大貴族で名は伏見蓮杜。あいつの目を覚まさせる為に奴の行方を追っている」
「伏見?ああ…あのイカれた野郎か。確かに来てたぜ。けどここにはいない。別の場所にいるかもな」
「だから探しに行く。
そこを退いてもらおう」
「だから行かせねえって言ってんだろ」
「やれやれ…話の通じない奴だな」
千歳は重い斧を片手で持ち、滅却師達に突き付けた。
「仕方ないから死神側に付いてやる」
黒い斧が一瞬、光を帯びた。
「破壊を開始する。
破壊対象は───お前達だ」
千歳は不敵な笑みを浮かべた。
◇◆◇
【霊王宮】
「来たか」
ユーハバッハの霊圧を感じた。
「雨竜くん…」
そうか
奴の血を飲んだんだな
「これがキミの運命だよ…いっちー。最初から決まっていたんだ。だから私はキミの歩む道は残酷だと思った。悲しい宿命だと同情した。友であるキミ達が…こうして未来で敵対する。いや…友だから…なのかもな」
悲しい表情で小さく笑う。
「あの男が目覚めた所為で全てが壊れた。私達の運命を狂わせた元凶。絶対に復讐を果たす。この命に代えても…必ず!!」
憎しみが宿る双眼でギロリと睨んだ。
◇◆◇
「──そうか、ここが霊王宮か」
「…………」
「──心中お察し致します、陛下」
「何の事だ、ハッシュヴァルト。朽ちた墓標を眺めたところでミジンの感慨もあるものか」
「…失礼しました」
「貴様は別件で動いてもらうぞ」
ユーハバッハは名も亡き人形に別件を口で伝える。
すると一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに頭を下げて名も亡き人形はその場を立ち去った。
◇◆◇
「行くぞ」
「はい」
手を翳すと黒い物体が地面に落ちてハッシュヴァルトの背後で形となる。その黒い物体の中から数人の敵が現れた。
一斉に走り出すと階段を塞ぐようにして一人の人物が降り立った。
ゴアッ!
刀を振ると突風が吹き、敵の体は宙に浮いてユーハバッハがいる近くまで飛ばされる。
「悪いけど…ここは部外者立ち入り禁止なんで帰ってくれないスか?」
低い声で敵を威圧する。
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