第45章 Neglecti-気づかないふり-
「だからその鈴をいつも身に放さず持ち歩いている」
「………………」
『ユーゴー』
思い出の中の少女は嬉しそうに自分の名を呼ぶ。
少し恥ずかしそうに。
それでいて…どこか愛しい声で。
ハッシュヴァルトはそれを搔き消すように目を瞑り、低い声で呟いた。
「お前の言っている事は全て憶測だ。
私にそのような者など…いる筈が無い」
雨竜から離れるとハッシュヴァルトはどこか悲しい眼を宿し、その場を立ち去った。
◇◆◇
一人の少女が戦場に降り立つ。
夕陽色の髪を揺らし
巨大な斧を片手に
破壊すべきものを破壊(こわ)す。
少女は自分の使命を果たす為に
罪を犯した友に力を貸す為に
闇に堕ちた友の目を覚まさせる為に
“救いある破壊”を続ける。
「また派手に暴れてくれたな、賊軍共」
機械の様な斧を肩に乗せ、呆れて溜息を吐く。
「肝心の死神共は何をしているんだ」
ここに来る前から感じていた霊圧の消失。
消え逝く魂に少女は眉を顰めた。
「やはり一番強い霊圧は…」
高い屋根から辺りを見回す。
「ん?」
ふと空に視線を向けると…
「なんか落ちてくる…!?」
物凄い速度で降下する物体は激しく塔にぶつかった。
「…着地地点を誤ったのか?」
思わず溜息が溢れる。
「だがこの霊圧は…」
不敵に笑うと少女は塔がある場所に向かって走り出した。
◇◆◇
「…落ちたみたく見えたか?」
「おちたな」
「ウソん」
「痛って〜〜ちょっと勢いつけすぎてたな…」
「!?」
四人は一斉に振り返る。
視線の先には一護が立っていた。
「…何だよ、ボロボロじゃねーか、剣八」
一護は倒れている更木を見下ろす。
「…何しに来やがった…」
「…あんたにこんなこと言う時が来るとはな。
助けに来たぜ」
「…はっ。
まさかてめぇに助けられる時が来るたァな」
「立てるか?」
「…立てるかだと?
バカ言え、俺よりてめえの心配しやがれ」
更木の言葉は一護の後ろにいる人物を意味していた。
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