第45章 Neglecti-気づかないふり-
「天柱輦で送ってあげたいトコなんだけど私達がそれおいと何度も下りる訳にはいかないからね。帰りはキミ一人でコレを下ってもらうよ。ああ、心配しないで。普通に瞬歩で行けば一週間くらいだ」
「…わかった。まあ大丈夫だろ!」
「けっこう距離あるけど大丈夫?」
「何言ってんだよ。大した距離じゃないって言ったのはおまえだろ。普通に瞬歩で行って一週間ならめちゃめちゃ急げば半日くらいだろ!何とかなるって!」
「………………」
一護の様子に唖然とする梨央だったが笑いを堪え切れず吹き出してしまう。
「あははは!!」
「?」
「そうか…うん…なるほど…ふふっ」
「なんか可笑しいこと言ったか?」
「ごめん、何でもないよ。でもさ、いい面構えになったね。もし腑抜けた面構えだったらそこから突き落としてたよ」
ニコッと笑う。
「冗談だけど」
「(冗談に聞こえねえ…!!)」
梨央なら本気でやりかねないと一護は背中をぞくりとさせた。
「いっちー、私はキミに謝らなければならない」
「何をだ?」
「キミを…赦せなかった」
「!」
「もちろんキミ自身に…じゃない。滅却師の血を引いて、尚且つ、斬月を扱っている“キミの運命”を…許せなかったんだ」
「………………」
「ユーハバッハは目的の為に里を襲い、邪魔な存在である三大家の当主達を殺害した。そして…私の母の力までも奪った。おかげで全て滅茶苦茶になったよ」
「…全部聞いた」
「そうか」
梨央は力なく笑う。
「キミの母親、黒崎真咲も滅却師だった。そしてその滅却師を助けた一心さんのことも…最初は恨んだよ」
「お前は…俺を殺したいと思ったことはあるのか?」
その質問に梨央は驚いた表情で一護を見て固まる。
だがすぐに悲しそうに小さく笑う。
「正直に答えるよ」
「………………」
「殺したいと思ったことは…ない」
「!」
「でも…関わりたくないと思ったことはある」
「それは俺が滅却師の血を引いてるからか?
それとも斬月を持っていたからか?」
「…どっちも」
視線を床に落として答える。
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