第45章 Neglecti-気づかないふり-
たとえ斬月の正体が
ユーハバッハだろうと
私は友達を護ると誓った
彼が絶望しないように
泣かないように
一人で立ち止まらないように
私が前に進む勇気を与えるんだ
「お、水が盛大に上がった。
ということは…無事に完成したみたいだな」
遠くに見える宮殿から水が上がったのを確認して笑う。
そして視線を二人に移す。
先に到着したルキアと恋次はお互いに刀を突きつけ合い、言葉も発さず、ただジッと堪えている。
「「………………」」
ガランガラン
「「ぶは─────っ!!!」」
終了を唱える鐘が鳴ると汗だくの二人は大きく息を吐いた。
「ふい─────っ!!きっついなーオイ!!」
「たわけ!ただじっと向き合うだけの修行の何がキツいのだ!」
「馬鹿野郎!俺ァ向いてねェんだよ!ひたすらジッとしてんのも味方に刀向けんのも!」
「わ…私だって味方に刀を向ける事など向いておらぬわ!」
「だからオメーもガタガタに疲れてんじゃねーか。それに…まだここの空気にも慣れちゃいねえしな…」
「確かに…ここの大気の霊子濃度は異常だ…押さえつけられるような重さこそ無くなってきたが…未だ水中を動いているような感覚だ…これほどの霊子濃度が我々にどう影響をもたらすかは見当もつかぬが…」
ピピピッ
「!」
その時、ルキアの伝令神機が鳴る。
「朽木だ。ああ…、!、本当か!ああ!ああ!」
「?誰だ?」
「御影からだ!」
「あのウザメンから…。
お前いつの間に番号を…」
「兄様が回復なされたそうだ!」
「回復したのか!良かった───…ってことはこれからメシ食って刀鍛えてその次に…」
「詩調の『涙雨殿』だね」
「「!」」
「まァ、彼女でも朽木隊長を追い返す様な振る舞いはしないと思うし…安心して良いよ」
「梨央!」
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