第44章 Rex-斬月の秘密-
「未練はないのか」
ふと最後の方に視線を向けると梨央は目を見開いた。
“未練に足を引っ張られて恩人を見殺しにした俺を明日の俺は笑うだろうぜ”
まるで梨央の気持ちを先読みしたかのようにそう書かれていた。
「…そうか…あの人も私も同じだったんだ…」
梨央はフッと笑って手紙を封筒に戻したのだった…。
◇◆◇
霊王宮の空を見上げながら梨央は呟く。
「一心さんは真咲さんを助けた為に死神の力を失った」
二度と死神には戻れないという
デメリットだらけの選択を
突きつけられたのにも関わらず
それでも彼は
自分を救ってくれた命の恩人を
守り続けることを決めた───。
「きっと私も同じだ」
自分の命を救ってくれた恩人を
見捨てることはできない
迷わず彼と同じ方法を選んでいた
「さて…そろそろ帰って来る頃かな」
梨央は笑って言った。
◇◆◇
「…戻ったかハッシュヴァルト」
滅却師の始祖である男は玉座に座っていた。
「対象は?」
「ここへ」
「───よく来た、石田雨竜」
白装束を身に纏った雨竜が姿を見せる。
「そして…」
影に紛れて姿を現したのは…
「よくぞ私の許へ帰って来た」
男は口許を上げて笑う。
「“名も亡き人形”よ」
フードを深く被り、素顔を隠した人物を雨竜は不思議そうに見た。
「さあ共に戦おう、我が息子と僕(シモベ)よ」
◇◆◇
その頃、一心から真実を告げられ、自分の過去(ルーツ)を知った一護は、タイミングを見計らって現れた楯鞍したりの手によって『黎明殿』に連れ戻されていた。
「貴方を現世に飛ばした“超界門”は元々往復の時間を厳密に設定しなくちゃ開かない。蒼生様は最初から一晩で貴方を連れ戻すようにと梨央様から言われていたんです。一晩で何も変わらなかったらそれ以上は幾ら待ってもムダだってね」
「そういうことだ」
「!」
「良いツラ構えになったな。今のお前ならできるハズだ。さぁ、その浅打達を───」
蒼生が言い終える前に浅打達が一護に跪いた。
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