第44章 Rex-斬月の秘密-
「運命というのは本当に残酷だな…」
更木剣八と卯ノ花八千流
二人が一度刃を交えれば
どちらか死ぬしか無い…
「憧れ…か」
更木剣八は
卯ノ花八千流に
“憧れた”
彼女と戦って初めて恐怖した
初めて戦いを愉しいと感じた
今まで何を斬っても同じだと感じていた更木剣八が
卯ノ花八千流のようになりたいと
“憧れ”を抱いた─────。
卯ノ花八千流は────倦んでいた。
剣に 戦いに
それ故
剣を悦ばせるに足る敵を求めて
彼女はあらゆる場所を彷徨った
それ故 剣が
それに倦む者同士を引き合わせたのだろう
出会ってしまったのだ
二人の“剣八”が─────。
更木剣八は
永遠に戦いを愉しむ為
自らを封じる術を身につけた
卯ノ花八千流は
永遠に戦いを愉しむ為
自らを癒す術を身につけた
二人が手にしたその力は
この一戦の為にあったのだと
私は確信している
「一つの時代に剣八は一人」
それは掟であると同時に
避けられぬ宿命(さだめ)
何故なら
強き者は
次なる強き者を見つけた時
もはや自らの為に剣を
振るえなくなるからだと
彼女は思っていた
その時 その鋒は必ず
次なる強き者を
殺す為か
育てる為かの
どちらかに向けられる
恐らく彼女の鋒は─────
「!」
その時、一つの霊圧が消失したのを感じた。
梨央は悲しそうに笑うと目を閉じる。
「───座興は…此れにてお終い…」
そして主を失った斬魄刀が此処に還る。
「おかえり────『肉雫唼』」
これで更木剣八は“剣八”の名を継ぎ
卍解も習得した────。
「後は…彼次第だな」
空には真っ白な雲が浮かんでいる。
「…“ホワイト”」
そう発言して顔をしかめた。
「“死神の魂”を元に創り上げた“失敗作”…!」
憎らしげに白い雲を睨み付ける。
「あの人と彼女が出会うことになった元凶」
ギリッと歯を噛み締めた。
今でも忘れない
あの日のことは───。
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