第44章 Rex-斬月の秘密-
「…何も言わねえんだな。お前なら必死でやってるコイツを帰らせるなんて許さねえとかそんなことを言いそうな気がしてたんだけどよ…気がついたんだろ?今回ばかりは。“どんなに必死にやってもムダなんだ”って」
恋次は目を逸らす。
「───俺は今までに打った全ての浅打の“在り処”を知っている」
死神は
その全てが浅打を与えられ
練磨を経て それを己の斬魄刀へと変えてゆく
それは死神と斬魄刀との関係に於ける
根源であり根幹
「絶対の摂理」
隊士 隊長はもちろん
俺達零番隊の斬魄刀も
そして孤独無類の更木剣八でさえ
死神の死体から奪うことで浅打を手にしている
「全てだ。尸魂界の開闢以来、俺の打った“浅打”を持たずして己の斬魄刀を目覚めさせた“死神”は只の一人も居やしない」
その言葉に恋次は驚いた表情を浮かべる。
「───解ってたんだ。“このやり方じゃアイツは無理だ”って梨央もお前も解っていたはずなんだよ。解ってねえのはあの男だけ。だからあの男は知らなきゃならねえ。自分の“魂の在り処”をな」
蒼生は空を見上げた。
◇◆◇
「…そうですか。
最下層『無間』で更木隊長と卯ノ花隊長が…」
伝令神機を通して誰かと会話している梨央。
「はい…わかりました」
通話を終えると、梨央は悲しい眼で空を見上げる。
「そうか…あの二人が…」
『無間』はその字の如く
一分の間も無く閉ざされ
その音の如く
無限に等しき広さを持つ
「卯ノ花烈…いや…“卯ノ花八千流”」
彼女は罪人の顔を持っている─────。
「そして更木剣八…」
彼も彼女同様、罪人である…。
「だからこそ『無間』で戦うのが相応しい」
“卯ノ花八千流”
史上最強と言われる初代十三隊
その中で
十一番隊隊長を務め
今の十一番隊の原形を作った
山本元柳斎に力を買われ
隊長となる前は
尸魂界史上
空前絶後の大悪人
天下無数に在る
あらゆる流派
そして
あらゆる刃の流れは
我が手にありと
自ら名付けた名は
“八千流”
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