第4章 書類配りII
彼らを救えなかったのは
私のせいなんじゃないかと…。
もう少し早く奴らの計画に気付けていたら
彼らは実験の材料にならず
正しい道を歩む事が出来たのではないかと。
でも…結局救えなかった
彼らの命に手を伸ばせなかった
堕ちていく彼らを
正しい道に戻すことはできなかった
「(私は無力だ…)」
命も守れず 人を救う
伸ばした手さえ掴めない
正しく廻る彼らの運命さえ
歯車を壊し 狂わせてしまった
「(だからせめてもの償いとして…)」
私に罪滅ぼしをさせてほしかった───。
「君は責任感が強い。大方、彼らを救えなかったのは自分のせいだと責め、罪悪感から投獄を決意した。違うか?」
「へぇ…随分と私を理解したように語るんだな」
「君を理解した事など一度もないよ」
「(この男…本当に気持ち悪い。)」
「それよりもうギンには会ったかい?」
「…会うはずないだろ」
「君が帰って来てとても嬉しそうだったよ」
「……………」
「あの頃よりも随分と成長した。彼も隊長としてよく働いてくれている」
「二人揃って本当に忌々しい」
殺気をぶつけるも藍染の表情は変わらない。
「君は私の何が気に入らない?」
「“何が気に入らない”だと?」
流歌はハッと鼻で笑う。
「キミこそ私の何が気に入らない」
「人の命を救う事に何の意味がある?」
「は?」
思わず素っ頓狂な声を出す。
「人は弱い生き物だ。だから死ぬ時は死ぬ。それなのに君は無駄な命を救おうとする。自らの命を犠牲にして。今も昔も、君の犠牲愛は理解できない」
眉間を寄せ、怖い顔を浮かべる流歌。その殺気溢れる霊圧に藍染の口許に笑みが浮かぶ。
「…やはり君は面白い」
「早く書類を寄越せ」
一刻も早く去りたくて無理やり藍染から書類を奪うと扉に向かって歩き出す。
「今度こそ大切なものを守れる事を祈ってるよ───仁科梨央」
ピタリと足を止め、首だけを後ろに回す。
「今度こそ世界から消される事を祈ってるよ───藍染惣右介」
冷たい声で言い、執務室を出た。
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