第4章 書類配りII
扉を閉めると背を向けていた藍染がこちらを振り向き、涼しげな表情を浮かべた。
「まさかキミが隊長に昇格していたとはな」
「実力だよ。私は自らの力で隊長の座へと登りつめた」
「違うな。隊長になれたのは自分の力だけじゃない。キミがその隊首羽織を着ていられるのは“キミが彼を利用して得た力もある”だからだ」
「あの事件の事を言っているのか?」
「それ以外に何がある」
「あれは実に残念な事件だった。まさか君が“あんな事件を起こした”なんて…未だに信じられないよ」
「それを仕向けた奴がよく言う。キミが私を罠にハメたんだ。だから私は濡れ衣を着せられて百年も投獄することになった」
憎悪の色を眼に宿し、藍染を睨む。
「あの時はよくも騙してくれたな」
「“騙す”?」
藍染は可笑しそうに笑みを零す。
「それはおかしな言葉だ」
「何?」
「罠にハマるも何も“あれ”は君が一人で計画して一人で実行した事。彼等が“あんな結末を迎えてしまった”のも全て君が招いた結果だ。騙すなんて人聞きが悪い」
「それこそおかしな言葉だな。彼らがあんな結末を迎えてしまったのはキミのせいだ。あの実験さえなければ…あの夜何も起こらなかった。それを全て狂わせたのはキミだ」
「私が実験の為に彼等を利用したとでも言うのかい?」
「最初からそう言ってる」
「証拠は?」
「!」
「もしあの事件の首謀者が私なら、それを示す明白な証拠がある筈だ。全ての罪を君に着せたという証拠はどこにある?」
「……………」
「それに君は自ら罪を認めたんだろう?だから有罪判決を受け、百年の投獄を余儀なくされた。主犯は君だと云ってるようなものだ」
「(たしかに私は罪を認めた。)」
意味も解らず
四十六室の査問に呼ばれた
そこで身に覚えのない罪を着せられ
奴らの話を聞いているうちに
それが全て私の自由を奪う為の罠だと知り
“あの事件”を起こした犯人達を憎んだ
「(でも、気付いてしまった…。自分の罪に。自分の愚かさに。)」
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