第43章 Around-宮殿巡り-
【碌迦殿】
かぽーん
大浴場で獅子落としが綺麗に音を立てる。
「さあさあ一護クン!こっちっスよ!」
何故かご機嫌の琉生に案内されて向かったのは温泉だった。
「どうスかこの温泉!」
「あー…うん…いいんじゃね?」
「やっぱ一護クンもそう思うっスか!
いや〜自慢の温泉なんスよね〜!」
「(いつの間にか呼び方まで変わってるし…。つーかそのキラキラオーラ収めろ…!!)」
気持ち悪いくらいニコニコ…いや、ニヤニヤしている琉生の緩みきった表情筋。その声はとても嬉しげに聞こえ、一護は頭を抱えた。
「(やっぱ原因は…“アレ”か?)」
時間を遡る事、数分前───……
『琉生』
『なんスか?』
『彼が男でもしっかり仕事しろよ』
『えー、適当でいいじゃないスか。パッと湯に浸かってササッと終わらす。女の子だったら一緒に入ってイチャイチャできんのに…』
『一緒に入るな。イチャイチャもするな。キミは真面目に仕事をしろ、自分の責務を果たせ。いいな?』
『ハァー…何が悲しくて野郎の裸なんか見なきゃなんねえんだっつーの。あーイマイチ気分が乗らないっスね』
『(琉生の性格にも困ったものだな…。彼の気分を上げる何かがあればいいんだが…)』
『女の子だったらウキウキ気分だったのに』
『ちなみにだが…』
『なんスか…?』
『彼には妹が二人いるらしい』
『…マジっスか?』
『ねえいっちー、キミ確か妹がいたよね?』
『いるけど…何で?』
『妹が…二人も…』
『おい?どうした?』
『こんな所で油売ってる場合じゃねえ!』
『は?』
『何を呑気に突っ立ってるんスか!さっさと温泉入りに行くっスよ!キビキビ歩いて!キビキビ!』
『ちょ、おい、待て!』
一護の背中を押して強引に宮殿に向かわせる琉生の顔は気持ち悪いほどニヤけていた。
『下衆ね』
『クソ野郎だね☆』
『ゴミ屑だな』
その後ろ姿を梨央達は冷めた眼で見ていた。
『何歳なの?』
『小学生だよ』
『やだー!るーたん犯罪者〜!』
女性なら見境なしに愛する琉生の女好きに梨央達は引いていた。
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