第43章 Around-宮殿巡り-
それを聞いた二人は泣きそうな顔をした。
「だからキミ達を護る為に一緒には連れて行けないんだよ。此処で大人しく聖兎と共に待ってるんだ」
「こ…怖くなったら…どうしたらいいの?」
「子守唄を歌え」
「子守唄…?」
「それって…あるじが寝る前にいつも聴かせてくれる歌?」
「あぁ、覚えてるか?」
「うん!覚えてる!」
「ボクね!あの歌好きだよ!」
「僕も!」
「私も好きだ」
「でもあるじ…もし狼さんがボク達を食べに来たら…こわいよ…」
「僕達…食べられちゃう…?」
怯える双子の頭を撫で微笑む。
「安心しろ」
そして聖兎を見上げて言った。
「“赤ずきん”がキミ達を護ってくれる」
「!」
「赤ずきん…?」
「その赤ずきんは強くてカッコいいんだ」
「おおかみ…やっつけてくれる…?」
「あァ。だから聖兎の傍を離れてはいけないよ」
「聖兎が赤ずきん?」
「ボク達を守ってくれるの…?」
不安そうな顔で聖兎を見上げる。
「あ……」
重大な責任に聖兎は手が震える。だが託された“役目”に覚悟を決めた聖兎は顔を引き締めた。
「もちろんです!私がお二人をお護りします!怖い狼さんはこの赤ずきんが退治しますからね!」
「「うん!」」
ぐっと拳を握る聖兎に丙と壬も安心して笑った。
ザワッ
「「!!」」
その時、一つの霊圧を遠くて感じた。
「お二人とも?どうかなさいましたか?」
「いや…何でもない」
「……………」
悲しい顔を浮かべる二人に聖兎は首を傾げる。
「じゃあ…行って来るよ」
「お気をつけて」
三人に背を向け、歩き出す。
「「行ってらっしゃーい!」」
振り返れば、丙と壬がぶんぶんと手を振って笑顔で二人を見送っている。それに応えるように梨央は片手を挙げ、再び歩き始めた。
「…気づいてる?」
「さっきの霊圧だろ。
激しく乱れたな…」
「うん。乱れて“消失”した」
「……………」
「嘘だと信じたいね…」
総隊長の霊圧が消えた───……
「そうか…死んだのか…ジジイ…」
悲しげに呟く。
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