第43章 Around-宮殿巡り-
「始まってんだな、向こうは…」
「きっと多くの犠牲者が出る」
「それでも戦わなきゃなんねえんだ。それが俺達の…死神としての役目だ」
「…そうだね」
梨央は空を仰いだ。
「(なんて色鮮やかな青…)」
その空が好きなはずなのに
今はただ、腹立たしい…
◇◆◇
「あ、来た!」
「双子はちゃんと送り届けたっスか?」
「ああ」
「それにしては随分と時間がかかったね」
「ちょっと迷子探しをね…」
「迷子探し?」
「「………………」」
「どうしたの二人とも?」
二人の様子がいつもと違うことに気付いた霙が不思議そうに聞いてくる。
「なんか変だよ?」
「大丈夫」
「本当に?」
「うん」
そう言って誤魔化す。
「里の被害はどうだった?」
「地盤が緩んで所々に被害が及んでいたけど、結界に守られてるおかげで何とか無事だよ。でも敵の“気”にアテられて反応が鈍くなってる」
「90地区まで範囲が広がってるんスね…」
「キミ達の仕事は終えたか?」
「住民の避難なら完璧だよーん」
「ご苦労様」
「それにしても…霊王宮は無傷だね」
「当たり前よ。“鍵”が無ければあの男だろうと入って来られないわ」
「…今頃、静霊廷はどうなってるかな?」
「激しい交戦が続いてるでしょうね」
「此処に着いてからも沢山の霊圧が消失した。許せない…卍解を奪うだけじゃなく、人の命まで奪おうとするなんて」
「霙……」
「信じよう」
「…そうだね」
梨央が言うも、霙の表情は晴れない。
「じゃあ次の役目に移る」
「次の役目?」
「黒崎一護を迎えに行く」
「黒崎一護…?」
「死神代行スか?」
「あぁ。明日、朝一番に天柱輦に乗って尸魂界に戻る」
「あのね…梨央ちゃん」
「ん?」
「二人が来る間に皆で考えたんだ」
「考えたって何を?」
霙は真剣な表情で梨央を見た。
「梨央ちゃん、お願いがあるの」
「お願い?」
「最初で最後のお願い───……」
そう言い、霙は微笑んだ。
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