第43章 Around-宮殿巡り-
「あるじー」
「あおいー」
丙と壬が二人の死覇装を軽く引っ張る。
「早くここから出よ」
「喉渇いた〜」
「キミ達ね…」
「緊張感の欠片もねえな」
二人の言葉に丙と壬はキョトンとする。
「霊王宮に着いたらジュースでも飲もうか」
「「うん!」」
「聖兎も心配してんぞ」
「そうなの?」
「これだもんな…」
「彼女に会ったら謝るんだよ」
「「はーい」」
双子と共に二人は洞窟を出て、霊王宮へと向かった。
◇◆◇
【霊王宮】
「お嬢様!坊ちゃん!」
先に到着していた聖兎は四人の姿が見えると涙ぐんだ顔で駆け寄ってきた。
「聖兎ー!」
「よか…良かったですぅぅぅ〜……!」
「聖兎泣き虫〜」
「ぐすっ…申し訳ありません…っ」
「ほら二人とも、聖兎に会ったら何て言うの?」
「「聖兎、心配かけてごめんねー」」
「ユルい謝罪だな」
「本当に反省してるのやら」
座り込んで、えぐえぐと泣く聖兎の頭を丙と壬が優しく撫でる。
「お、お二人が見つからなかったら…私…私…!責任を取って切腹する覚悟をしておりました…!」
「いつの時代の武士だよ」
蒼生がすかさずツッコむ。
「聖兎」
「は、はい…!」
名前を呼ばれ、慌てて涙を拭う。
「双子を頼んだ」
「!」
「キミが護ってくれ」
聖兎は真っ直ぐな眼で梨央を見た。
「必ずお二人をお守り致します!」
力強い言葉に笑み、梨央は片膝を付いて丙と壬に言う。
「二人とも」
「「なァに?」」
「今度の戦は長くなる。
キミ達は絶対に此処にいろ」
「どうして?」
「ボク達も着いて行ったらダメ?」
「邪魔しないよ?」
「(いつかのやり取りを思い出す…)」
「ね、蒼生、僕達も一緒に行きたい」
「駄目だ」
「むぅ……」
二人は頬を膨らませる。
「怖い狼がキミ達まで食べてしまわないか心配なんだよ」
「怖い狼…?」
「私達はこれからその狼の群れを倒しに行く。この世界が狼達のモノになってしまわぬように。その狼はね、人を食べちゃうんだ」
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