第1章 仕組まれた罠
そして少女が監獄から釈放され
数日が過ぎた頃────。
「ふぁぁ〜」
「眠そうだね」
大きな欠伸をした少女は手で口を覆う。その眼はまだ眠たそうだった。監獄にいた時は暗くて分からなかったが、少女は胸元まで伸びた美しい緑の髪をしている。
「昨日は遅くまで霙の実験に付き合ってたんだ」
「実験?」
「今度は何の実験なの?」
二人の少年は同じ反応を示す。
「聞いて驚け」
少女はニヤリと笑んだ。
「“人形に魂を宿せるか”」
衝撃の言葉に二人は驚いた表情を浮かべる。
「そりゃ無理だろ」
「僕も不可能だと思うな。いくら彼女が天才でも人形に魂を宿すなんて…」
「そうだな、彼女は天才なんだ」
「その口ぶり…まさか成功したの?」
「人形が動いたところは初めて見た」
「天才の名は伊達じゃねえってことか」
ガチャッ
「おっはよー!」
扉を開けて元気よく挨拶して入って来たのは、桃色の髪をツインテールで結び、翡翠色の瞳をした少女だ。
名は───鬼灯 霙。
『科学が生んだ天才(ジーニアスサイエンティスト)』の異名を持つ天才少女である。
「おはよう鬼灯さん」
「おはよ!みっくん!」
「朝から声のボリュームがでけぇよ」
「朝は元気じゃないと一日は始まらないよ蒼ちゃん!」
「いや元気じゃなくても始まるだろ一日は」
正論を述べる少年の言葉に霙は“細かいことは気にしない”と言い放つ。
「霙、二人にもあの子を紹介したら?」
「そのつもりで来たんだよん♪
さあ、入っておいでー!」
霙がバッと手を扉に向ける。
「この子が霙の友達だよ!」
扉の隙間からひょっこりと顔を覗かせた兎の人形。恥ずかしそうに顔を半分だけ覗かせてこちらを見ている。
「何で入って来ねぇんだ?」
「きっと蒼ちゃんの顔が怖いんだね!」
「ざけんな元からこの顔だわ」
「本当に動いてる…生きてるみたいだ」
前髪が伸びて両眼が隠れてしまっている少年は興味津々といった様子で兎の人形を凝視する。
.