第1章 仕組まれた罠
最後に帯を締めたと同時に檻の施錠が外れた。身を屈めて檻の外に出た少女は無愛想な顔でこちらを見下ろす少年に笑んだ。
「あの頃より身長伸びたね」
「お前は何も変わらねえな」
「嬉しいでしょ?」
「別に」
「妹に対して冷たい対応〜」
「まだ実感出来てねぇんだよ。お前が俺の前にいて、こうしてちゃんと帰って来たっていう実感が」
「大丈夫、ちゃんと帰って来たよ。実感がないなら抱きつこうか?」
「やめろ気色悪い」
「もっと妹を労って!」
「おーおー、よく頑張ったな。えらいえらい。俺の妹は本当にすげぇよ。おかえり」
「まあね!ただいま!」
「…そろそろ行くか」
「そうだね」
扉を押し上げ、二人は監獄を出た。
◇◆◇
「良かった、ちゃんと晴れてる」
見上げた空は
どこまでも青さが広がり
澄み渡っていた───。
「百年ぶりに空を見たよ」
「晴れて良かったな」
「うん、私の好きな青空だ」
その空はまるで
少女を迎え入れてくれているように
雲一つない快晴だった────。
「風が気持ちいい」
大きく息を吸い込む。
「やっと光のある場所に戻って来れた」
少女は嬉しそうに呟いた。
「あー」
「どうした?」
「急に明るい場所に出たから目がおかしい」
ゴシゴシと目を擦る。
「おい、あんま擦んな」
「ちょっとズキズキする…」
「しばらくすれば慣れんだろ」
「だといいけど…」
目を擦るのを止め、柔らかな笑みを少年に向ける。
「これで失明したら監獄ごとぶっ壊したよ」
「恐ろしいこと言うな」
「はは、冗談だって」
「(いや目がマジだった…)」
「でも安心したよ」
「!」
「捕まる時にコレが奪われなくて」
少女の親指には青い宝石が埋め込まれた指輪が嵌められている。その宝石には何かの紋章が刻印されていた。
「早く帰ろう。みんなが待ってる」
「そうだな」
仲間との再会に心を躍らせながら、少女は帰るべき場所に少年と肩を並べて歩いて行った。
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