第42章 Tandem-最期の言葉-
再び目を覚ますと、殺される前と同じ場所で、無傷で佇んでいた。
『…本当に生き返ったのか』
念の為、ペタペタと自分の身体を触る。
『!』
すると胸元に不思議な紋章が刻印されていることに気付く。
『契約したことを示す証…か』
忌々しく睨みつける。
『(まさか奴には未来が…)』
聞き取れなかったユーハバッハの言葉が今になって思い出す。
“貴様の未来は既に見ている”
“だから───……”
“もう一度、私を殺しに来い”
『……チッ』
無性にイライラして舌打ちをする。そして適当に花を摘んで、屋敷に戻った。
◇◆◇
扉を開け、エントランスホールから二階にある自室に向かおうと歩いていると…
『よぉ、帰ったのか』
『!』
父親の書斎から丁度出て来た蒼生と会った。
『……………』
『どうした?』
『あのさ…』
そこまで言いかけて黙り込む。
『(私が一度死んでしまったことは言わない方がいい。罪を犯した私を…彼は許さないだろうしな。)』
『おい?』
『んーん。何でもない』
『言いかけてやめんじゃねえよ』
『何でもないってば』
『言え。余計気になんだろ』
『引き下がるねぇ』
コツコツと歩み寄って来た蒼生の顔がしかめられている。苦笑した梨央は肩を竦め、誤魔化した。
『死神の採用試験、受けてみようと思う』
『あ?死神?』
『霊王の側近から手紙が届いてた。死神になる気はないかって。キミにも話そうと思ってたんだよ〜』
『(“キミ”…?)』
蒼生は強烈な違和感を覚えた。
『近いうちに返事出さないとな。あ、この花ね、花瓶に生けようと思うの。どう?』
『…いいんじゃねえか。それとその話、後で改めて聞かせろ。俺は部屋に戻ってコレ読んでる』
『了解』
本を片手に蒼生は階段を登って行った。そして完全に蒼生の姿が見えなくなった瞬間、梨央は不気味な笑いを見せる。
『やっと…手に入れた──。』
『これでこの身体は…私のモノだ』
低い声で『悪』がククク…と嗤った。『悪』は蒼生が消えた方をじっと…見つめた後、その場を立ち去った。
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