第42章 Tandem-最期の言葉-
『私は全てを壊したあの男に復讐したい。そして…兄を守りたい。お前を私の中に棲まわせてやる。だから…望みを叶えろ!』
《取り引き成立だな。これから末長くよろしく頼むよ…『もう一人の私』。》
すると梨央の前に淡い光が現れ、何事かと警戒していると…やがて淡い光が消えた。
『え……?』
そこに立っていたのは自分と酷似した少女。髪の長さ瞳の色まで似ている。自分を不思議そうに見ている梨央に少女はニコリと笑んだ。
『初めまして』
自分とは似ていない、優しい声だった。
『私はキミの暴走を制御する為の“保険”だよ』
『保険?どういうこと…?』
『もしキミが何らかの原因で暴走してしまった時、私の力を使ってキミ自身を制御する為のストッパー。それが…“ちっぽけな私”という存在』
『…暴走なんてしない』
ムッと顔をしかめると、少女は困った顔で笑む。
『まだ幼かったキミは無意識に力を暴走させ、滅却師の王に傷を与えたね?』
『!!』
『それが暴走だよ。周囲の人達を巻き込んでしまう前に私の力でキミの力を抑え込んだ。あれ以上、被害が出なくて良かったよ』
『それは…ありがとう。助かった。』
『どういたしまして』
素直にお礼を言うと少女は柔らかく笑んだ。
『さて…私はそろそろ行かなきゃ』
『行くって…どこに?』
『用意された空間に。それともう一つ…その指輪、私に預からせてもらえないかな?』
少女が言っているのは、蒼生がくれた指輪だった。
『…でもこれは…』
『キミの大事な宝物でしょ?だからこそ、無くしてしまわないように私が大切に預かっててあげる。嫌なら構わないよ』
『…じゃあ、預かってくれる?』
『うん』
梨央は少女に指輪を預けた。そして優しい笑みを残したまま、少女は消えてしまった。
『……………』
《さァて、話は済んだな?》
“まだいたのか”という視線を送る。
《最後に一つだけ言い忘れていた。》
《“頑張れよ『復讐者』”──……》
その瞬間、意識が遠退き、梨央はゆっくりと目を閉じた───……。
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