第42章 Tandem-最期の言葉-
「(あぁ…なんて…残酷なんだろう…)」
泣いていた。幼い自分と同じように、悲しい瞳からは涙が一筋溢れ、罪禍の亡骸を見つめる。
「(これも私の運命…。これが…私の辿る運命。大切な母を憎き男に殺され『───』となった。なんて…滑稽なんだろうか。)」
それからは駆けつけた軍警によって、梨央達は無事に保護されたが…精神的に大きな傷を残す事となった。身体も心もズタボロに傷付けられ、疲労も溜まってたのか、梨央達は意識を失うようにして眠りについた。
彼女達が眠っている間に、三人の遺体は、霊安室に運ばれ、丁重に弔われたのだった…。
◇◆◇
それから月日は巡り、数年が経過した現在、滅却師によって崩壊させられた里の復旧が終わり、今では襲撃前と何ら変わらぬ状態へと戻っていた。
ただ唯一、変わったと言えば…。
『皆様、この度は新当主就任の儀にお集まり頂き誠に有難う御座います。では早速、新当主のお披露目とさせて頂きたいと思います』
『伏見家より御子息様が就任致します。伏見家二十八代目当主、伏見蓮杜様。』
『夕凪家より御令嬢様が就任致します。夕凪家二十八代目当主、夕凪千歳様。』
『そして…仁科家より御令嬢様が就任致します。仁科家二十八代目当主、仁科梨央様。』
椅子に座っていた三人は立ち上がる。その表情に笑顔はない。みんなどこか死んだような目をしている。
『本日より新当主が誕生致しました。もう一度盛大な拍手を!』
喝采が聞こえる中、新しい当主に選ばれたのは、まだ成人も迎えていない少年少女だった。
『何が新当主だよ…くだらねえ』
黒髪の少年は苛立ちで顔をしかめ、喝采を浴びる人々を嫌悪の眼差しで見つめる。
『…てっきり蒼生がなると思ってた。何でお前なんだ?』
『別に深い理由はない。二人で相談して決めたんだ。私の方が当主に相応しいからと。』
『ふーん…』
二人の少女の会話はそれだけだった。誰が見ても分かるように四人の関係性はあの事件以来、変わってしまった。
仲が良かった四人だが今ではほとんど顔を合わせない。互いの屋敷に行き来したり、よっぽどの用が無い限りは距離を置いていた。
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