第42章 Tandem-最期の言葉-
次に蒼生に顔を向けた罪禍は、蒼生の目が少し赤くなっていることに気付く。
『蒼生』
『!』
『泣きたい時は泣いてもいいんだ。我慢する必要なんてどこにもない。泣くお前を誰も責めたりしない』
『泣いてねえし…。』
『そうやって弱さを隠すところは私に似てるな。心に鍵を掛けて本音を隠す。泣いてしまえば…梨央を心配させると思っているんだろう?』
『!』
『お前は本当に妹想いだ。梨央が泣いてるとお前はそうやってずっと手を繋いでくれる。梨央が安心して笑えるように』
蒼生の手はずっと梨央と繋がったままだ。
『梨央はこの通り泣き虫で我儘で甘えたがりだ。でもお前がいるからこの子は笑顔でいられる。まぁ…少しべったりの気もするが。』
罪禍は苦笑する。
『逆にお前は滅多に泣かないし、あまり我儘も言わないし、甘えたがらない。双子なのに不思議だなとは思っていた』
『だって…男が泣くとか…恥ずいだろ…。父さんだって泣いてるところ見たことないし…』
『あれは心が頑丈だからな。泣けと言われて素直に泣くとは思えん。まぁ…お前に伝えたいのは…弱音を吐き出す場所と弱音を聞いてくれる友を見つけろ』
『………………』
『その友が必ずお前の味方になる。そうすればお前はもっと自由に生きられる』
罪禍はにこりと笑う。
『梨央を護ってくれてありがとう。どうかこれからもずっと傍にいて護ってやってくれ』
『…そんなの…当たり前だろ。コイツは…俺の妹なんだから』
『うん。頼んだぞ、お兄ちゃん。』
蒼生は涙を堪えて頷いた。
『梨央、絵本読む約束、守れなくなってすまない』
『いいよ…だって母様は私達を護ってお空に行くんだもんね?』
『!そうだ。母様は空の上からいつもお前達を見守っている。だからこれからも兄妹で力を合わせて助け合え。決してその手を離すな。どんなことがあっても互いを信じろ。でも時には喧嘩することもあるだろう。だが大丈夫だ。お前達ならすぐに仲直りできる』
二人の頭に手を置く。
『頑張れるな?二人とも。』
『うん…っ!』
蒼生も力強く頷いた。
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