第42章 Tandem-最期の言葉-
怒り心頭の千咲の物言いに頭を手で押さえたまま蓮杜は叫んだ。
『何がお母様とお呼びだ!歳を考えろよ!』
『ホホホ、あんたにはまだこの美貌が分からないのね。残念だわぁ』
げぇっと蓮杜はうんざり顔を見せた。
『どこも怪我してないでしょうね?』
『してねえ!俺は強いからな!』
『よろしい!!』
そして三人は今まで以上に怒りと憎しみを込めた眼と表情をユーハバッハに向ける。
『剣を捨てよ』
『!』
『大人しく従わなければ、子を殺す。』
その発言に梨央達は怯えた表情をし、自分達の母親を不安げに見つめる。
『…わかった』
『罪禍……』
『お前の言う通りにする』
『母様……』
『お前の望みは邪魔者である私達を消すことなんだろう?』
『そうだ』
『なら約束しろ。私達が投降する代わりにこの里を諦め、子供達には一切手を出さないと』
『……………』
『今、約束しろ。』
『…良いだろう。貴様達さえ殺せれば、この里も子も不要。手出しはせぬと約束しよう』
円香と千咲は罪禍に歩み寄る。
『貴女ならきっとそう言う気がしましたわ』
『すまない』
『謝らないで。それが正しい判断よ。子供を護る為だもの。仕方ないわよ』
千咲はどこか吹っ切れたように笑んだ。
『まさか死ぬ時まで三人一緒とはな』
『ふふ、生まれる時も三人一緒でしたわね』
『不思議ね…幼馴染って』
円香の言葉に二人は“確かに”と頷いた。
『本来の計画では貴様達の目の前で子を殺すつもりだったが、その逆も余興としては面白い』
挑発とも捉えられる発言を聞き流し、三人は剣を地面に落とすように捨てると自分の子供に歩み寄る。
『おいババア…まさかあんな奴の言いなりになるんじゃねえだろうな…?』
『だからその呼び方…。ハァ…本当にもう…アンタは最後まで口が悪いわね。全く誰に似たのかしら?』
『目の前にいんだろ』
『ホント生意気!』
呆れるも慈愛に満ちた笑みで蓮杜を抱きしめた。蓮杜は驚いて目を見張る。
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