第42章 Tandem-最期の言葉-
『誰よりも強くなりなさい。その強さは必ずアンタの生きる原動力になる。そしてアンタはこの子達を護るの。“幼馴染”を大切にしなさい。この子達くらいよ、アンタの我儘に付き合ってくれるのは。だから、しっかり手を引いて護ってあげなさい』
『!』
『でも…“強さ”の意味を履き違えては駄目よ。アンタの強さはこの子達を護る為に使うの。この子達を傷付けるような強さは捨てなさい。この子達がいるからアンタは強い。だから…アンタの好きな“正義”の強さで皆を護るのよ』
『な、なんで…今そんなこと言うんだよ…』
『今だから伝えるのよ』
『いやだ…聞きたくねえ…』
『アンタは生意気だし、皆を引き連れて危険な探検に行くし、母親をババア呼ばわりするし、ちっとも言うこと利かなかったけど…それでも楽しそうなアンタの顔を見るのは幸せだった』
蓮杜から身体を放して、千咲は笑う。
『大好きよ、蓮杜。これからもずっと、愛してるわ』
『…………っ』
じわり…と普段は滅多に泣かない蓮杜の瞳から涙が溢れ落ちる。そんな我が子を見て千咲はもう一度、強く抱きしめた。
『母様……』
不安げに此方を見つめる千歳を安心させる為、円香は和らげな笑みを浮かべる。
『千歳』
『はい…』
『貴女の魔法はまだまだ未熟です。基礎は完璧にマスターしていますが私が教えた上級魔法の完成には今の実力では程遠いです』
『うっ……』
『ですが…術式や構造を理解しているので、沢山の努力と時間を費やせば、必ず特訓の成果は現れます。貴女には私以上に魔法の才能がありますわ』
『母様より…?』
『ええ。でもこれからは貴女が一人で頑張らないといけません』
『え?』
『千歳なら大丈夫ですわね?』
『…母様は?いつもみたいにアタシに稽古つけてくれるんでしょう?』
彼女は目を閉じ、答えの代わりとして首を横に振る。
『私はもう…貴女に魔法は教えられませんの』
切なげに笑み、千歳を抱きしめた。
『千歳は努力を惜しまない子でしたわね。どんなに稽古が厳しくても、魔法が失敗して挫けそうになっても、絶対に弱音は吐かなかった』
『だって…早く母様に追いつきたいから…』
『知っていますわ』
.