第42章 Tandem-最期の言葉-
『どうだ。殺したい相手に見下される気分は?さぞかし屈辱だろう?…良い気味だ。』
『………………』
『最初からこうしておけば良かった』
『(こんなモノ、すぐに解ける。)』
力を使おうとするが…
『!?』
力を使ったはずなのに…身体の自由が未だ利かないままだった。
『(何故、力が使えぬ…)』
表情には出さないが、混乱する頭で考える。そんなユーハバッハを見て罪禍は可笑しげに笑う。
『霊圧がグラついてるな。くくっ…お前でも混乱するのか。ざまあみろ。』
罪禍は深い青の瞳でユーハバッハを睨む。
『“あらゆる能力(技)を無効化し、あらゆるものを奪う”。それが私の力だ。』
『!!?』
『私はお前から全ての力を無効化し、身体の自由を奪った。ただ、この力はコントロールが難しく、扱いづらい。それに私自身、身体に負荷が掛かる為、余り使わない』
『……………』
『残念だったな。せっかく私達を殺し霊王を吸収して新しい世界を創るはずだったのになァ』
『私達を殺そうなんて身の程を知りなさい』
『敵に回す相手を間違えたわね』
『これがお前の運命。“此処”が終着点だ。』
動けないユーハバッハに歩み寄り、両手で縦に剣を握り、構える。
ユーハバッハは恐怖に怯える事なく、無言で罪禍を見る。
『最期に言い残すことはあるか?』
『──未来は既に見ている。』
『?』
呟いた言葉に三人は疑問を抱く。
『どういう意味だ』
『すぐ解る』
不気味に嗤うユーハバッハに嫌な予感を覚えた。だが気にする余裕もなく、罪禍は縦に構えた剣を背中に突き立てる。
『母様──!!!』
『っ!?』
ピタッ
背中に刺さる寸前で聞こえた声に思わず手を止める。
『な……っ!』
三人の視界に映ったのは愛する我が子の姿。全員が怯えた顔を揃え、それぞれの母親を見ている。
『何で此処に…!!』
円香は驚いた声で言う。
『母様…!』
『…梨央…蒼生…』
『母さん、ごめん…』
妹を止められなかった事、母親の言いつけを守らなかった事。蒼生は申し訳なさそうに謝る。
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