第42章 Tandem-最期の言葉-
ユーハバッハは直ぐに光の弓を出現させ、複数の矢を放った。地上から放たれた矢が自分の所に向かって来るにも関わらず、避けようとしない罪禍。取り乱す事なく、無表情でユーハバッハを見据える。
“捉えた──!!”
ユーハバッハはそう確信し、勝利の笑みを浮かべた。だが千咲と円香も笑っている。それがユーハバッハは気がかりだった。
『(何故、笑っている…?)』
そして何かに気付き、ハッとし、空を見上げる。罪禍の前に防御壁が展開され、向かって来る矢を全て跳ね飛ばした。
『莫迦な…!!』
『言ったはずだ。お前を絶対に許さないと。私達はお前を殺す。』
ガキィン!!
『ぐっ!!』
二つの刃が激しくぶつかり合う。
『大切なものを守る為に私達は命を掛けてるんだ。だから…お前を必ずこの場で仕留める』
『(何だ…この女から感じる力は…。)』
『“罪人に死を。”』
ぞくりと身体を震わせた。
『(なるほど…この女は危険だ。)』
罪禍がユーハバッハを押さえている隙に二人が左右から同時に剣を振りかぶる。咄嗟に攻撃を回避しようとするが…
『逃すか。』
『!!』
ゴッ!!
『ガ…ッ!?』
罪禍がすかさず、強烈な蹴りを腹部にお見舞いする。余りの激痛に声を漏らし、ユーハバッハは吹き飛んだ。
『やっと一撃を食らわすことが出来た。どうやら私達はお前に傷を残せたらしい』
『………………』
口から流れる血を拭い、罪禍を睨む。
『最初に喧嘩を仕掛けて来たのはそっちだ。私達は喜んで相手になろう。ただし…幸せを奪おうとするお前を無傷で帰す気はない』
低い声で言う罪禍の瞳には強い怒りと殺意が宿っていた。
『あの子達は傷付けさせない。私が…護ってみせる──。』
ザワッ
『!?』
その瞬間、ユーハバッハの身体は気付けば、地面に縫い付けられるようにして伏せっていた。
驚きを隠せず、目を見開く。
『(何が起きた!?身体の自由が利かん…!!)』
うつ伏せの状態から立ち上がろうとするが、身体に全く力が入らず、指先すら動かせない。
『(何をした──……?)』
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