第42章 Tandem-最期の言葉-
屋敷の外では今も激しい交戦が繰り広げられている。防御壁を自分達の前に展開し、向かって来る複数の矢を全て跳ね返す。
『夕凪家の防御力は天下一品ですのよ。矢如きに破られてたまるもんですか』
跳ね返された矢は進行を変え、ユーハバッハの元へと返っていく。だが本人を避けるように横をすり抜け、近くの木々や地面に突き刺さる。
『中々しぶといわね』
『攻撃も未だ当たらず…悔しいですわ』
『………………』
罪禍は訝しげにユーハバッハを睨む。
『どうにかして屋敷から離したいわね』
『子供達が心配ですわ』
『(この状況のせいで二人の霊圧が感知し難い…。あの子達は無事に会えただろうか。)』
『余り時間稼ぎは出来ませんわよ』
『そろそろ終わりにしないと』
『あぁ…そうだな』
三人はユーハバッハを見る。緊迫した空気が流れ、ユーハバッハも警戒心を張り巡らせる。
お互いに視線を外さず、ただじっと見つめ合う。“外したら敗ける”…それを知っているからだ。
そして──……
シュン!
『!!』
ユーハバッハの視界から一瞬にして三人の姿が消えた。
『(ほぅ…速度が上がったか。)』
周囲に目配せをし、三人の気配を探る。
『!』
ガキィン!!
背後に現れた円香が剣を振り下ろす。だが同時にユーハバッハも振り向き様に剣を振るい、彼女の一撃を防ぎ止める。
『褒めてやろう。正面から斬り掛かっていたら私の剣の方が先に貴様を斬っていた』
『だから命拾いでもしたと言いたいんですの?本当に…ナメられたものですわね!!』
『!!』
次の瞬間、横合いから鋭い刃が飛んでくる。首を狙うように死角をついてきた刃に驚くが…
『ク……ッ』
防いでいる剣を弾き返し、千咲の振るった剣を首元に当たる寸前で身体を後ろに傾け、そのまま後方に飛んで回避した。
『“やっぱり後ろに飛んだ”わね?』
『ここまでは想定済みですわ!』
『何…!?』
二人が笑った瞬間、ユーハバッハの身体に威圧感が重くのしかかる。この時初めてユーハバッハの顔色に焦りの色が垣間見えた。
空を見上げると…剣を構えた罪禍が勢いをつけて落下してくる。
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