第42章 Tandem-最期の言葉-
『ごめんね…私が部屋を飛び出したから…』
『お前のせいじゃねえから謝んな』
『ごめんね…お兄ちゃん…』
『手、離すなよ』
『うん……』
男達に連行され、エントランスホールに繋がる階段を降りていると…
『!蓮杜…』
『千歳!』
表情を青ざめさせた二人がいた。同じように自由を奪われ、男達の手によって拘束されている。千歳に至っては僅かに身体が震えていた。
『…な、なァ…これは一体どういうことなんだ?どうしてあたし達がこんな目に遭うんだ…?』
状況が呑み込めず、千歳は泣きそうな顔をする。蓮杜が自分を拘束してる男を睨み付ける。
『てめえら…ぜってー許さねえからな』
『おー怖いねぇ。お前みたいなクソガキに何ができる?大人に勝てるなんて思うなよ』
『(隙見てぶっ殺す…。)』
『あたし達…どうなるんだろう?』
『千歳…』
『今日は母様と術式の特訓をするはずだったんだ。なのに…何でこんなことに…』
『泣くんじゃねーよ。貴族探検隊は簡単に涙を見せたらダメなんだぞ。どんなに絶望の底に叩き落とされても心だけは強くなきゃダメなんだ。だから我慢しろよ、バカ。』
『蓮杜の癖に良いこと言うな莫迦…』
『俺の癖には余計だっつーの。安心しろよ。お前らのことは俺が守ってやる。それがリーダーの役目だからな』
『…蓮杜、怖くないの?』
『こっ…怖くねえ…!』
『声が震えてるわよ』
『うっせえ。武者震いだ。俺は強いんだ。日頃からババアに鍛えられてるからな…ちょっとやそっとの絶望で泣いてたまるか』
『…でも…蒼月はもうダメかもって』
『バカ言ってんじゃねえ。この里はババア達が造ったんだぞ。加えて霊王の加護も込められてる。そんな簡単に…落ちるわけねえだろ』
『蓮杜……』
『おい、お喋りはそこまでだ』
『これより陛下の元に参る』
『その目に焼き付けるんだな』
『我らが陛下の強さを。』
『最強の力を持つ三大家でも所詮敵わない。あの方には“全て見えている”んだからな』
男の言葉に違和感を感じながら、扉を押し開けた。
.