第42章 Tandem-最期の言葉-
『何なんだお前。さっきから意味の分からない言葉ばかり並べて…不愉快だ』
『お主に知ってもらいたんじゃよ。幸せの形を。あの子達はそれをよく知っておる』
『誰があんな奴らと友達になるもんか。冗談じゃない。きっとあいつらだって見捨てるに決まってる』
『見捨てる?お主を?』
『善人のフリして手を差し伸べて役に立たなかったら容赦なく見捨てる。もううんさりだ。だから信じない。お前達なんか。』
強い憎しみのこもった声で言われた。
『誤解する前に訂正しておくよ。あの子達は決してお主を見捨てたりせぬ。それだけは絶対じゃ』
『…だから信じないって言ってるだろ』
『お主が信じなくても良い。さて…長話をしてしまったな。悪いがあの子達を追わねばならぬ。悪いが其処を通してもらう』
『言ったはずだ。あの方の命令は絶対。“いらないもの”は排除する。お前を殺して、あの子達も殺す。そうすればあの方は今度こそ…』
その続きは聞き取ることは出来なかった。
『…仕方ないのぅ。子供を痛めつける気はないんじゃが…どれ、少しお灸を据えてやろうかの』
柊の顔つきが変わる。
『……………』
少年も剣を握りしめ、無表情で、だが冷たい眼で柊を見つめるのだった…。
◇◆◇
『梨央!!待て!!』
廊下を走る梨央に追い付こうと蒼生は息切れをしながら速度を上げる。
『この…止まれ!!』
パシッと腕を掴めば、驚いた顔で此方を振り向く梨央。ぜぇぜぇと肩を上下させながら蒼生は怒った。
『何やってんだ!!敵が屋敷の中にいるかもしれないんだぞ!!勝手な行動はするな!!』
『だって母様が心配なんだもん!きっとあいつだよ!あいつがまた母様をいじめてるんだ…だから助けないと!』
『お前がいたら母さんの邪魔になるだろ!』
『そんなことない!私が母様を助けるの!』
『行っても迷惑だ!俺達がいたら足手まといなんだよ!』
『やだ!』
『この…分からず屋!!どうしてお前はいつも母さんを困らせるんだよ!!』
『りょーしがいないと赤ずきんちゃん負けちゃうかもしれないの!!』
『訳わかんねえこと言うな!!』
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