第42章 Tandem-最期の言葉-
『(罪禍…お主らだけが救いじゃ。頼んだぞ。)』
柊がそう祈りながら窓に目を向けた瞬間…
ガシャーン!!
『きゃああ!!』
突如として窓ガラスが割られ、部屋の中に砕けた破片が飛び散る。悲鳴を上げて頭を抱える梨央の身体を蒼生は引き寄せ、強く抱きしめる。
二人を守るように自分の胸に抱き寄せた柊は辺りを見回す。
『な…なに今の…?』
『ガラスが割れたんだ…』
『二人とも、じっとしてるんじゃ』
すると蒼生が壁に突き刺さった何かに気付く。
『矢……?』
蒼生の声に反応して壁に目をやると一本の矢が壁に深く突き刺さっていた。それを見た梨央が蒼生の手を離し、慌てて立ち上がると部屋を出ようとした。
『っ…母様!!』
『バカ!!勝手に部屋から出るな!!』
その手を蒼生が掴む。
『母様が危険なの!!』
『少し落ち着け!!』
『いや…!!』
『梨央!!』
蒼生の制止を振り切り、パニックのまま部屋を飛び出した梨央に蒼生は苛立つ。
『待て梨央!!一人で動くな!!』
『蒼生!!梨央!!勝手に行ったらいかん!!戻るんじゃ!!』
だが蒼生は梨央を追って出て行ってしまう。残された柊もすぐに二人の後を追いかけようとしたが…
『誰じゃ、そこにおるのは…?』
殺気を研ぎ澄ませ、部屋の中を見回す。
『!』
そこに…いたのだ。
『(子供…?)』
気配はなかった。この部屋に侵入した気配も、僅かな呼吸の音も、心音さえ、何も気付けなかった。
『(何じゃ…いつから其処におった?)』
柊の前には黒マントで全身を隠した子供がいた。フードで顔は隠れていて分からないが、背丈は蒼生や蓮杜とそんなに大差はなかった。
『答えよ。お主は何者じゃ?滅却師か?』
『…違う…滅却師じゃない…』
柊は気付いた。その子供から殺気を感じないことに。戦う闘志すら無いように思えた。
『質問を変えよう。お主…“いつから其処に居た”?』
『──最初から。』
『!?』
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