第42章 Tandem-最期の言葉-

鳴り止まない争いに梨央は隣に座る蒼生の手をギュッと握る。それに気付いた蒼生は落ち着いた口調で言った。



『大丈夫だって言ったろ。
お前の傍には俺がいる』



『うん…』



それでもまだ怖がりで泣き虫な梨央は表情を曇らせる。



『ねぇ医師…蒼月、どうなっちゃうの…？』



『……………』



柊は二人を見る。



『霊王様の加護が消えかけておる…。この里の結界が破られたからじゃ。蒼月も…長くは持たんじゃろうな』



『そんな…』



『じゃが安心せい。この里にはまだ三大家の当主達がおる。彼女達がいる限り、奴の目的も果たせんよ』



優しげに笑い、二人の頭に手を置く。



『母様…』



『母さんは強い。どこの王だか知らねえけど敗けるはずないだろ』



『うん。母様は強い…だから負けない！』



胸の前で両手の拳をグッと握り、笑う梨央を見た蒼生はホッと息を吐く。



すると握られたネックレスのチェーンが目に入り、それが指輪だと云うことに気付いた。



『その指輪…』



『うん！誕生日に蒼生がくれた！』



『見かけねーから捨てたのかと…』



『むぅ…捨てないよ！私の宝物なの！』



『おぉ、サファイアの宝石が一段と美しく輝いておるの。見せてもらっても？』



『医師ならいいよ！』



『ありがとう』



柊は渡された指輪を見る。



『(“Always　with　you.”)』



指輪の内側に彫られた文字に気付く。



『(“あなたの傍にいつもいます”──……)』



思わず柊は頬を綻ばせた。



『これはお主が考えたのか？』



『そうだけど…』



『妹想いで何よりじゃ』



『！別に…兄貴として当たり前だし…』



照れ臭そうに顔を背ける蒼生。



『本当に二人は仲が良いのぅ。その絆さえあればどんな障害も乗り越えていける』



『えへへ〜』



ブンブンと手を振れば、痛くないのに痛いと声を漏らす蒼生。でも話を聞いていない梨央は“お兄ちゃん大好き！”と嬉しそうに笑うのを見て“…知ってる”と小さな声で呟いた。



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