第42章 Tandem-最期の言葉-
バン!!
『うわあああん!!』
『うわっ!?』
勢いよく扉を開け、その人物の背中に飛びついた。驚いた蒼生が振り向くと、涙と鼻水で顔を汚した梨央がいて、小さな身体が震えている事に気付き、抱きしめる。
『はぁ…よかった。無事だったのか…』
蒼生は安堵の表情を見せ、息を吐いた。
『一人でよく頑張ったな。怖かったろ?』
『ひっく…ううう〜!』
『もう大丈夫だ。俺が来たから安心しろ。もうお前を独りにしねえから』
『お兄ぢゃあああ…』
『あーほら。顔ひどいことになってんぞ。女が鼻水垂らすんじゃねーよ』
『だって…だってぇ〜!』
『ったく…』
『こわっ…怖かったよおぉぉ…』
『分かったからもう泣くな』
服の袖で涙を拭ってやる蒼生。
『見つかって良かったのぅ』
『!柊医師…!』
扉付近に立っていたのは蒼月で唯一の医師をしている老人だ。彼は先代の頃から三大家の医師を専属で務めており、梨央達のことは生まれた時から知っている。
『どうして医師と蒼生が一緒にいるの?』
『この騒動じゃからの。心配になって二人を探していたところに蒼生を見つけたんじゃよ』
『蒼生はどこにいたの?』
『父さんの書斎。あそこで本を読んでたんだ。そしたら突然地震みたいな揺れが起こった。お前を探しに行こうとしたんだよ。絶対一人で泣いてると思ったから』
『大好きお兄ちゃん!』
嬉しさの余りギュッと抱き着く。いつもなら引き剥がすところだが、そうはしなかった。
『さて…二人は儂と一緒に騒動が収まるまで此処にいよう』
『母さんは?』
『あ!母様、蒼生を探しに行っちゃった…』
『安心せい。罪禍の事じゃ。蒼生が儂らと共に居る事は既に霊圧で知っておる』
『ここにいるって分かるの?』
『そうじゃよ』
『なら安心だね!これで母様は安心して狼を退治できる!』
『狼?』
『うん!』
ニコニコと笑う梨央の発した言葉の意味が解らず、蒼生は不思議そうな顔をするのだった…。
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