第42章 Tandem-最期の言葉-
蒼生を探しに屋敷中を走り回る。それでも蒼生は見つからず、罪禍の表情にも焦りと苛立ちが垣間見える。
『どこにいる、蒼生…』
屋敷の外に出た罪禍の元に二人の女性が慌てた様子で駆け込んで来た。
『罪禍!!』
黒髪の女性と夕陽色の髪の女性だ。黒髪の女性の名は伏見千咲。夕陽色の髪の女性の名は夕凪円香。三人は当主にして幼馴染である。
『一体これはどういう状況なの!?』
『里が滅茶苦茶ですわ!』
千咲と円香の質問に罪禍は心当たりがあるかのように険しい表情を浮かべた。
『子供達は?』
『部屋から出ないように言いましたわ』
『うちの子も凄く嫌がってたけど強引に部屋に押し込めたわ。“何すんだババア”って言われたけど大人しくさせといた』
ぐっと拳を握り締めた千咲を見て、何かを察した二人は苦笑した。
『相変わらずだな』
『拳骨は駄目ですわよ』
『拳骨じゃないわ。“擽りの刑”よ。そしたら笑い疲れて気絶したわ』
『な…中々容赦ないですわね』
『うちなんていつもこんなもんよ』
ふっと笑い、どこか遠くを見る千咲に苦労してるんだなと二人は内心思った。
『罪禍のところは?』
『…上の子が見つからない』
『蒼生君が!?』
『行き先を聞いておけば良かったな…』
『まずいわね。今の状況で一人は…』
『一緒に探すの手伝いますわ』
『だが住民の避難もあるだろう』
『それは軍の奴等に任せましょう。夫達も人手が足りなくて駆り出されてるし』
『すまない…』
『困った時はお互い様ですわ』
『ありがとう』
そして三人が手分けして蒼生を探しに行こうとした時だった。
『!』
何かの気配に気付き、三人は咄嗟にその場から飛び退く。その直後、空から複数の矢がさっきまで三人がいた場所に降り注いだ。
『何!?』
『上だ!』
三人は空を見上げる。そこには白装束を纏い、巨大な光の弓を構えた黒髪の男がいた。
『誰?』
『私達を狙いましたわよ…』
罪禍はその男を見て激昂した。
『そうか…これはお前の仕業か!!』
蒼月が襲撃された原因が解明され、男に向けて叫ぶ罪禍を二人は不思議そうに見る。
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