第42章 Tandem-最期の言葉-
その意味に気付いた罪禍はドアノブから手を離し、一度だけ扉を開ける。すると涙を浮かべた梨央がいて、罪禍の姿を見るなり、嬉しそうに抱きついた。
『(本当に愛らしい。親バカと言われても仕方ないな。二人は私の大切な宝物なんだから…)』
『母様!りょーし必要?』
『そうだなぁ…』
『りょーし…いらない?』
しゅんと落ち込んだ梨央の頭を撫でる。
『こんな可愛い猟師を狼の目に晒したくはないな。お前達は二人で猟師のつもりなんだろう?』
『うん!蒼生もりょーし!私と蒼生はね、何をするにも一緒なの!嬉しい?母様嬉しい?』
『あぁ。お前の気持ちは嬉しい。でも母様は平気だ。場を踏み荒す躾のなってない狼は私が必ず倒す』
『でも…一緒に…行きたい…』
『すぐに戻る。それまで待てるな?』
『…うん、待ってる』
『いい子だ』
罪禍は梨央の額にキスをする。
『いい子にして待ってるから今日も寝る前に絵本読んでくれる?』
『愛しいお前の頼みなら』
『やった!約束ね!絶対だよ?』
『もちろん』
『えへへ〜』
ニコニコと嬉しそうに笑う。
『じゃあ大人しく此処で待ってるんだぞ。誰か来たらクローゼットの中に隠れろ。お前の身体なら見つかることはない。ただし物音は立てるな。分かったな?』
『うん!』
『よし』
罪禍は立ち上がる。
『蒼生を連れて来る』
『うん!』
そして罪禍は扉を閉め、梨央をその場に残し、蒼生を探しに行った。
『大丈夫かな…』
罪禍がいなくなり、急に寂しさが襲ってきた梨央は不安げに眉を下げ、泣きそうな顔でギュッと服を握りしめる。
罪禍が来るまで部屋で大人しくしてようと思ったが、寂しさと不安を紛らわせる為に部屋の中を歩き回る。
ベッドの横にある棚を開け、木箱を取り出す。
『えへへ、私の宝物!』
蓋を開けると手紙やら押し花やら何処かで拾ってきた色のついた石がしまってあった。その中から一番大切な宝物を手に取る。
それはサファイアの宝石が埋め込まれた銀色の指輪だった…。
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