第42章 Tandem-最期の言葉-
その頃、蒼生と別れた梨央も双子を探し、洞窟の中を歩き回っていた。
「丙!!壬!!どこにいる!!」
声を張って叫ぶも、洞窟内に梨央の声が反響するだけで二人の霊圧すら感じない。
「チッ…上手く霊圧が探せない」
苛立ちは増すばかり。
「(あの時に感じた嫌な空気…)」
怪訝に眉を顰め、顔を歪ませる。
「…記憶映しの洞窟か」
そう、呟いた瞬間だった。
ぐにゃり
「!!」
突如、周囲の空間が歪み、背景が変化する。
「これは…」
吐き気がするほど重苦しい空気が漂う洞窟にいた筈なのに、目を疑うような状況が起こっていた。
「何で屋敷に…」
其処は自邸だった。二階の長廊下に梨央はぽつんと佇んでいる。驚きで言葉を失うが、すぐに理解した。
「そうか…これが…あの洞窟の視せる記憶の思い出の中というわけか」
何が再現だ
これはまるで…
「あの日を見てるかのよう…」
ドォォォン!!!
「っ!?」
凄まじい衝撃音が響き渡った。それは屋敷の外から聞こえ、慌てて窓に駆け寄る。
「なっ!?」
空から白い光が隕石のように降り注ぎ、蒼月の里に襲いかかる。その一つ一つが強烈で、屋敷や建物は見る見るうちに原型を失い始める。
「何で結界が破られ…」
混乱する頭で再認識した。
「ふざけんな!“最初から”じゃないか!」
バン!と窓を両手で叩く。
「冷静になれ!混乱するな!これは既に起こったことだ!再現された記憶だ!惑わされるな!」
そう強く自分に言い聞かせる。
爆発音が鳴り響き、空から降り注ぐ攻撃が里全体に広がり、最悪の事態へと変わる。
「くっ……!」
梨央は憎らしげに空を睨む。そこには白装束を身に纏った人物が立っている。
「(お前が…お前が…お前がっ!!)」
激しい怒りが込み上げ、握りしめた掌から血が流れ落ちる。
所々で黒煙が上がり、人々の悲鳴が嫌になるほど耳に届く。それでも梨央は助けに行かなかった。何故か。それは…今自分が見ている光景が遠い昔に既に起こった過去だと分かっているから。彼女は悔しい気持ちでいっぱいだった。
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