第42章 Tandem-最期の言葉-
「流石に重いな」
「それだけ霊子濃度が高いんだよ」
「水中を歩いてるみてぇな感覚…」
「すぐに慣れるさ」
二人は記憶映しの洞窟に足を踏み入れる。
「…此処に来るの、久々だな」
「母様達の言い付けを破って探検に来たけど入ったら怖くなって結局引き返したんだっけ」
「嫌な空気感じてたしな」
「あの頃の私達には耐えられなかったね」
昔話もそこそこに語り、洞窟の奥を見つめる。
「双子を見つけたらすぐに出よう」
「手分けして探した方が早そうだな」
「同感。早急に見つけないと双子の命に関わる。きっと二人の身体はこの洞窟には堪えられない」
「見つけたら連絡してくれ」
「了解」
「…気をつけろよ」
「キミもね」
先に洞窟の奥へと進んで行く蒼生の背中をジッと見つめた後、梨央も蒼生とは違う方向に進んで行った。
◇◆◇
「不気味な場所だな…」
周囲に警戒しながら蒼生は進む。
「あいつらどこにいんだ。普段はうるせーくらい元気なのにこういう時に限って声が聞こえねえ…」
《クスクス…───》
「!」
何処からか笑い声が聞こえ、足を止める。
《ヤアヤア、待チ人ガ来タ!》
《君ヲズット待ッテタヨ!》
「…でやがったな」
《君ノ為ニ“思イ出”ヲ用意シタンダ!》
「…用意?」
《キット喜ンデクレル筈ダヨ!》
《一生懸命、再現スルカラネ!》
《楽シンデイッテクレルト嬉シイナ!》
「(頭痛が酷くなってやがる…)」
蒼生は苦痛に眉を顰め、頭を片手で押さえる。
「(けど…あいつらを探さねえと…)」
その瞬間、周囲がグニャリと歪み、空間そのものが変化し始めた。
《サァサァ!始マルヨ!》
《君達ノ思イ出ガ再現サレル!》
《君達ノ記憶カラ探シタ思イ出…》
《“最高傑作”ヲゴ覧アレ──!!》
「(呑まれんなよ、梨央…)」
今は傍にいない大事な妹に向けて言葉を放つ。
「(絶望に…呑まれるな──。)」
蒼生は斬魄刀を強く握り締めた…。
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