第42章 Tandem-最期の言葉-
「お…お嬢様…?」
二人の存在を視界に捉えた聖兎は梨央の名を呼んだ。
「双子はどうした?」
「あっ……」
双子の事を聞かれた途端、更に顔を真っ青にさせた聖兎は震える身体で梨央の腕を掴んだ。
「も、申し訳ありません…申し訳ありません!!」
「!」
「どうしたら…!私…私…!」
激しく取り乱す聖兎は顔を俯かせて泣き叫ぶ。梨央はパニックになっている聖兎を落ち着かせる為、彼女の顔を両手で包み込み、強引に上げさせた。
「聖兎、私の眼を見ろ」
「!」
「ゆっくり深呼吸を」
「(海の輝きを閉じ込めたような青…)」
聖兎は小さく口を開け、ゆっくりと深呼吸を始める。ドクンドクンと大きな音を立て、普段よりも早く脈打っていた心臓は、彼女の青い瞳を見たことで次第に落ち着きを取り戻す。
「スーハー…スー…ハー…スー…ハァァ…」
「(揺らいでいた霊圧が収まったな。)」
それを確認して、もう一度問いかけた。
「聖兎、二人は何処だ?」
「それが…突然の地震に驚いて…お屋敷を飛び出して行ってしまったんです…」
「逃げた方向はわかるか?」
蒼生が聞けば、聖兎は不安そうに頷く。
「恐らくですが…『記憶映しの洞窟』だと思います」
「!?」
「そちらの方向にはあの洞窟しか御座いません。お二人が逃げたとしたらきっと其処です」
「…また厄介な場所に逃げ込んだな」
蒼生は手を額に当て困り果てる。
「聖兎、キミは何故此処を動かなかった?」
「あ…も、申し訳ありません!危険なのは重々承知しておりました!ですが…その…」
オロオロとする聖兎は梨央を見て言った。
「お二人の大切な場所でもあるお屋敷を見捨てることなんて出来ませんでした…!それにお嬢様からどんなことが起きても此処を守るように言われてましたから…」
「そうか…キミはずっと約束を守ってくれてるんだな」
「お嬢様…」
「ありがとう」
ニコリと笑みを浮かべる。
「二人を探そう」
「だな」
「聖兎、キミは先に霊王宮に行け」
「はい…」
聖兎をその場に残し、二人は洞窟へと向かった。
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