第42章 Tandem-最期の言葉-

「彼を絶望させるには一筋縄ではいかない。彼はこれまで多くの絶望をくぐり抜けてきた。何故彼はあれだけ気が狂いそうな程の絶望を経験しているのにも関わらず、立ち直れたと思う？」



《仲間の存在とでも言いたいんだろう。あの男にとって仲間は強化薬みたいなものだからな。》



「そう。仲間の存在が彼を大きくさせるんだ。素晴らしいだろう？仲間という存在は」



《馬鹿馬鹿しい。何が仲間だ。そんなもの作って何の意味がある。》



《所詮は赤の他人だ。血の繋がりがあるわけでもない。何故他人の為に戦える？命を呈して守ろうとする？》



「それを知りたければ、キミが『人』を理解しろ。そして認めろ。そうすれば自ずと解るかも知れないぞ」



《『人』を理解…？》



その言葉を噛みしめるかのように舌打ちが聞こえる。



「それとこれも教えてといてやる」



《！》



「絶望では彼の足は止められない」



「キミ如きが彼を語るな」



「仲間の存在を否定するキミが」



《本当に耳障りだな…》



《だがそこが問題ではない。》



《世界は変わる。あの男が望む新しい世界に。そうなればお前達は終わりだ。》



《愉しみだなァ…お前達が絶望する瞬間を見るのが。そして最後に何を求め、何に縋るのか。今から楽しみにしておくよ。》



「もう話は済んだな。さっさと失せろ」



《ククク…私も一つ教えといてやるよ。》



《彼女は“彼”の一番の理解者だが…彼女は“彼”のことを何も理解っちゃいない。》



「どういう意味？」



《『目に見えない真実に気づけ』。私から言えるのはそれだけだ。》



意味深な言葉を告げ、『悪』は消えた。



「…目に見えない真実？」



どんなに考えてもその真相に辿り着けず、息を吐き、椅子に座り直す。



「大丈夫」



微笑を浮かべ、空を見上げる。



「彼女達の結束は簡単には揺るがない」



「世界を守ってくれる」



“あの男はあいつの───……”



「………………」



悲しみの色を瞳に宿し、再び指輪に視線を向ける。



「あの男の思い通りの世界にはならない。きっと…彼女達がこの悪夢を終わらせてくれる」



指輪をギュッと両手で握りしめ、祈るように目を瞑った…。



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