第41章 Equiti-見えざる帝国-
《流魂街の民の生活レベルは五十地区を境に急激に低下し、衣服も襤褸布や裸足の民が増え始める…》
《そして過去五百五十年間の統計では草履をはいた民は五十九地区以降で一人も発見されていない。》
《つまり六十四地区に草履の跡があれば、それは全て死神の足跡の筈なんだ。》
「!」
彼の話が本当なら妙だ
通常 この手の調査には
技術開発局の霊子捜査班が同行する
しかし今回はそれも無かった…
「まさか…奴か…?」
一人だけ思い当たる人物がいた
「チッ…あの腐れ科学者。
本当にろくでなしの下衆野郎だな」
梨央は心底涅を軽蔑し、その場から立ち去った。
吉良が疑惑の眼差しでネムを見る。
「…涅隊長は一体何を隠しているんだ?
───涅副隊長」
「…わかりません。マユリ様はその件について私には何の情報もお与えになりませんでしたので」
「…僕はこれを総隊長に報告するよ」
「…お好きになさって下さい。マユリ様が間違った事などなさる筈がありませんから」
◇◆◇
「帰ったよ」
「おかえり〜」
「どうだった?」
「予想通りだった」
「それじゃあ…」
「奴らは滅却師だ」
全員が先程の梨央の反応と同じく“やっぱりか”というような顔だった。
「それからもう一つ」
「何?」
「流魂街の民衆が勝手に消える事件あったの覚えてる?」
「うん、覚えてるよ」
「あれ…死神だった」
「え?」
「死神って…」
「どういうこと?」
「報告によると足跡が一ヶ所に集まって消えてて虚の足跡がなかったから村人同士の仲間割れだと思われた。だが足跡の種類についての報告を聞いたら“裸足”と“草履”だったらしい」
「百年前の変死事件と似てるわね」
「でも犯人は違う人なんスよね?」
「通常この手の調査には技術開発局の霊子捜査班が同行するらしい。でも今回はそれも無かった…」
「梨央ちゃん…」
「まさか…犯人は…」
霙と詩調が交互に言った。
そう
今回の民衆失踪事件を引き起こした犯人
それは…
「涅マユリ───。」
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