第41章 Equiti-見えざる帝国-
不快感を抱いたまま、隊舎に戻ると、蒼生達が何やら支度をしていた。
「ただいま」
「隊長!何度も伝令神機に連絡したのよ」
「え?」
「どこ行ってたの〜?」
「…花の様子を見に行ってただけだよ」
伏見の事には触れず、誤魔化した。
「早く支度して」
「何かあった?」
「隊葬だ」
蒼生が梨央の横を通り過ぎながら言った。
「誰…誰が…」
「一番隊副隊長、雀部長次郎っス」
「雀部副隊長が…」
「総隊長達はもう着いてるよ」
どこか悲しみを含む声で雅が柔らかげに言う。
「雀部副隊長ってあんま印象ないな〜」
「関わりもないっスからね」
「顔もぼんやりよ」
「梨央ちゃんと蒼ちゃんは知ってる?」
「雀部長次郎忠息は隊長となるべき死神だった」
「あの人が?全然そんな感じには見えないっス」
「記録によれば京楽隊長や浮竹隊長の生まれる以前より卍解を修得していた。だが護廷十三隊の成立以降は一度たりともその能力を人前で使う事は無かった」
「副隊長なのに一度も卍解を…?」
「隊長格といえども人格者ばかりでは無いよ」
「雀部長次郎の実力を伝え聞いていようとも“戦いに参加しない副隊長”として席官程度の扱いをして侮辱する奴もあったみたいだな」
「戦いに参加しない…るーたんみたいだネ☆」
「ちょっと霙チャン!?オレちゃんと活躍してるっしょ!?」
「活躍した程度で調子に乗りやがって」
「酷い!!」
「御影、黙りなさい」
「こっちは冷たい!!」
毒づく二人の容赦ない言葉に琉生はショックを受ける。
「そして隊長が入れ替わり幾度その座に空席が出ようとも、暫定的な隊長代理どころか先日まで檜佐木副隊長や吉良副隊長の就いていた隊長権限代行の座すらも頑として拒んだそうだ」
「どうしてそこまでして…」
「全てはその苛烈な迄の忠誠心が故」
「雀部長次郎は山本元柳斎在る限り生涯一福隊長であると誓った男。その男が初めて戦いで卍解を使い、そして死んだ」
「総隊長の痛嘆、私達若輩が推し量るに余り有る」
「雀部副隊長は…本当に総隊長を尊敬してたんだ」
「さあ…行こうか」
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