第41章 Equiti-見えざる帝国-
「(馬鹿にしてるのはどっちだよ。)」
「俺は必ずお前を殺す」
その信念は固く、揺るがなかった。
「殺せるものなら殺してみろ。ただし…その時は私も容赦はしない。例え幼馴染でもだ」
ハッキリと告げると伏見は嗤った。
「さてと…テメェに会いに来た用件を言うぜ」
「(とっとと言えばいいものを。)」
「5日後、尸魂界は“見えざる帝国(ヴァンデライヒ)”により殲滅される」
「見えざる帝国(ヴァンデライヒ)…?」
今になって気付いた。彼にしては珍しい、白装束の衣装を見に纏っていた。
「キミが白を好むなんて珍しいな」
だからわざと言葉を選んだ。
「コレはなァ…特別に着る許可を貰ったんだ」
「?」
「あの事件の後、俺の所に“あの男”が来たんだよ。そしてこう言った。『私と一緒に世界を創り、強さを手に入れてみないか』ってな」
「っ!!?」
それで全て悟ってしまった。伏見の前に現れた謎の男。そして彼が着ている白装束。昔の記憶を思い起こす。
「(昔、母様に会いに来ていた男がいた。)」
その男は…
「っ、伏見…ッ!!!!」
怒りが爆発した。
「あの男が私達から何を奪ったのか忘れたのか!?家族を!!幸せを奪ったんだ!!私達の目の前で!!あいつは母様達を殺したんだぞ!?一番最低な方法で!!何故キミはあんな奴の手を取った!?」
「壊したいものがある。」
「…壊したいもの?」
「あいつは約束してくれた。自分の下に来れば望みを叶えてやるってな」
「そんなの嘘に決まってるだろ!?」
「確かにあいつはババアを殺した。でも…死んじまったモンは悲しんでも仕方ねえだろ?」
「…本気でそう思ってるのか」
「ババアが死んで俺は自由だ。誰も俺を咎めねえ。弱いと否定しねえ。あの事件は正しかった」
「ふざけんな…っ。そこまで腐ったか伏見…!」
伏見は何の感情も宿さぬ瞳で梨央を見る。
「あの事件が起きる事は運命だった。避けられねえ道だった。テメェだってそう思ってんだろ」
図星を突かれ、歯を噛みしめ、睨みつける。
「じゃあな、今度会う時は俺とお前のどちらかが死ぬ時だ」
そう言い、伏見は立ち去った。
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