第41章 Equiti-見えざる帝国-
『しゃーねーなァ。蓮杜だけじゃ心配だから俺もお前らを守ってやるよ』
『おい!俺だけじゃ心配ってどういう意味だ!』
『そのまんまの意味だと思うぞ』
『ンだとォ千歳!!』
『もー!喧嘩はやめて!あんまり騒ぐと監視システムに感知されて母様達に伝わっちゃう!』
オロオロする梨央は喧嘩を宥めようとする。この何でもない日常を彼女は気に入っていた。最愛の兄、大好きな幼馴染。幸せが溢れる、暖かな世界。それが何よりも心地良かった。
『探検が終わったら千歳の家に白猫ちゃん見に行ってもいい?ぴえーるも連れて行くから!』
『いいぞ。ピエールは本当にうちの白猫のことが好きだな〜』
『やったね蒼生!ぴえーるもいいって!』
『まさか俺も行くのか?』
『?うん、行くよ?』
『…一人で行けば?』
『………………』
ピシッと固まる梨央。その顔は悲しそうに歪められ、泣きそうになっている。
『蒼生!妹を泣かせるな!』
『猫くらい一緒に見に行ってやれよ。お兄ちゃん』
『お前の兄貴じゃねえよ!つーか泣くなって!あーもー!お前ほんと…分かっててやってんな!?』
『私達は一緒なの!離れたらダメなの!蒼生はお兄ちゃんなんだから私に冷たくしたらダメなの!』
『わぁーかったって!俺が悪かったよ!猫見に行けばいいんだろ!』
『嫌々言われてもイヤ!!』
『ぜひ一緒に行かせてください!!これでどうだ!!』
『許す!一緒に行こう!!』
『マジでブラコンこじらせてんなァ…』
『それでどうするんだ?
魔窟、行くんだろう?』
『当たり前だ!ほら行こうぜ!』
蓮杜が笑って手を差し出す。それを見た三人も手を繋ぎ、横一列で歩き出す。
『本当に虚が襲って来たら守ってね』
『任せとけ!な!蒼生!』
『もし身の危険が迫れば、流石の母さん達でも俺達の霊圧を感知して助けに来んだろ。だから一先ず安心しろ』
『でも案外あたし達で倒せたりしてな?』
『幼馴染の絆があればどんな敵だって俺達に恐れをなして逃げてくぜ!』
蓮杜は拳を突き上げる。
『行くぞ“貴族探検隊”!目指すは魔窟、“記憶映しの洞窟”だ!俺に続けー!!』
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