第40章 Periculo-性格の不一致-
私は幸せだった
私の世界は光で溢れていた
大好きな家族
大好きな幼馴染
この幸せが永遠に続けばいい
何も壊れず
何も奪われず
幸せがずっと…───
そんな時だ
『あ、母さんいたぞ。』
『本当!?』
“あの男”が
私の前に現れたのは───
『あれ?でも母様、誰かと一緒だ』
裏庭に出て見ると、探していた母はそこにいた。だが、誰かと一緒にいて、話しかけるのを戸惑った。
『知らねえ奴だな』
『蒼月では見かけないね?』
『きっと母さんの仕事相手だろ。俺達がいても邪魔だから先に夕凪家に行ってよう』
『(…何話してるのかな。)』
ぐい、と“彼”が手を引っ張る。
『でも母様…すごく怖い顔してる』
『────』
“彼”が私の名前を呼ぶ。咎めるような声のトーンだ。邪魔をするな、とでも言いたげな顔だった。
『あんな怖い顔の母様、見たことない…』
『仕事で何かあっただけかも知れないだろ』
『でも…』
すると二人は何やら口論を始めた。と言っても、声を上げて怒っているのは母の方だった。
『……………』
私は“彼”の手をギュッと握りしめる。その時だった。黙っていた男が突然、剣を母に突きつけたのだ。
『!!』
母は驚いて目を見開き、その光景を目撃した私達も驚いた顔を浮かべた。すると母の顔が更に怖くなり、周囲の空気が重くなる。
『母様をいじめるな!!!』
『『!!』』
涙を浮かべて、私は声を張って怒る。男は母に剣を向けたまま、振り向き私達を見下ろす。
『嫌い!!嫌い嫌い嫌い…!!母様をいじめる奴は大ッ嫌い!!!母様をいじめるな!!お前なんか大嫌いだ!!!』
怒りで泣き叫ぶ私の隣で“彼”も怒っていた。
『母さんから離れろ…それから剣を下ろせ』
『…“コレ”が貴様の宝物か?』
『ああ、そうだ』
母は歩み寄り、私を抱き上げ、“彼”の頭に優しく手を置く。
『ひっく…』
『女の子がそんなに泣くんじゃない。私に似た可愛い顔が台無しじゃないか。ほら、いつもみたいに笑ってくれ───梨央、蒼生』
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