第39章 Spero-託された希望-
「梨央」
「!」
名前を呼ばれ、ハッとする。
「少し落ち着けよ」
刀を持つ手の上から一護の手が重なる。
「相手の挑発に乗せられてどうすんだ。
オマエらしくもねえ。“冷静に”はどうした?」
「ああ…そうだね」
スゥ…と狂気めいた笑みは消え、元に戻った梨央は刀から手を放し、自分を落ち着かせるために深く深呼吸をした。
「ごめん、取り乱した」
「おう」
「さて…どうする?」
「俺に任せてくんねえか」
「もちろん最初からそのつもりだよ」
口許を上げて笑った。
◇◆◇
平和を望む世界で二つの刃が音を立てて交じり合う。
卍解した銀城と一護の戦いは終盤に差しかかろうとしていた。
「やっぱりキミに任せてよかった」
決着はすぐに着くだろう
銀城が彼に勝つのは無理だ
それは運命で決められている
見守ろう
戦いの終わりを─────。
「本当に仲間って素晴らしいな」
クスッと嬉しそうに笑う。
そして銀城が斬られ、雪緒の能力が消えた。
「私も…いずれキミを…」
そこまで口にして黙り込む。
そして────
ドサッ
銀城が血を流して倒れ、生き絶えた。
「無様な死様…」
それを憐れむ様に見下ろす。
「梨央」
「ルキア」
「無事だったか」
「そう簡単に死なないよ」
可笑しそうに笑った。
「隊長達は?」
「うむ、さっきまでここにいたのだが…一護の決断を見届け終わると尸魂界に帰還した」
「そう…全員無事なら良かった」
「その顔だと知られてしまった様だな」
「うん…」
「きっと一護は気付いていた筈だ。だがその事に触れなかったのは浮竹隊長を疑いたくなかったからだろう」
「隊長は本気で彼を騙すつもりはなかった。もし本気で騙すつもりなら絶対に気付かれない手段を取ったはずだからね」
「“一護にわざと気付かせた”」
「そして選ばせた。その結果、彼は自分で仲間を護る道を選んだ。きっと彼はいろんな人達を護れる力が欲しかった」
「人は無力だ。なんの力も無ければ何も護れない」
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