第39章 Spero-託された希望-
「隊長を侮辱することは許さない」
「許さないも何も事実だろ」
梨央は不愉快そうに顔をしかめた。
「奴の狙いは俺達を監視し制御し尸魂界の為の手駒として使い反抗すれば抹殺する事だ!」
「違う!!」
身勝手な言い分に思わずカッとなって声を荒げる。
「浮竹隊長はそんな人じゃない!!
それはキミの妄想話だろ!?」
「妄想じゃねえ。それにお前も知ってた筈だぜ。
それを一護に伝えなかったのは何故だ?」
「それは…」
銀城の言葉に何も言えず黙り込む。
「あの人は…人を傷付けたり悲しませるようなことは絶対にしない。誰よりも人の気持ちを理解して世界の平和を願う優しい人だ。彼を信じているからこそ代行証を渡したんじゃないか」
「どうだかな。それにお前も代行証の話を知ってたんだから同罪だぜ」
「!」
「お前は友達と言いながらそいつに代行証の意味を教えなかった。裏切ったんだよ、友と呼ぶそいつの事を」
「…………」
「それとも、お前もあの男に騙されてんのかもな」
「ふざけんな」
腹が立ち、キツく握られた拳に力が入る。
「平気で人を騙して傷付ける様な奴に隊長の何がわかる。浮竹隊長が今までどれほど辛い思いをしてきたか…キミ如きに理解されたくないんだよ」
銀城は冷めた目で梨央を見ている。
「だから…どうにかしないと…」
「?」
独り言を呟く梨央を銀城は不思議に思う。
「イラナイものは処分しないと…。
その為にはどうしたら…ああ…そうか…」
纏っていた雰囲気が豹変する。
「『殺せばいいのかァ』」
狂った笑みでニヤリと笑った。
「っ………!!」
思わず銀城は息を呑む。
「(何だ…コイツ急に…)」
「そうすれば全て終わりだ」
銀城の頭の中で危険信号が鳴り響く。
「誰にも邪魔させない」
上機嫌に笑って刀を引き抜く。
「護るって誓った。絶対に独りにしないって約束した。私は私の『望み』を叶える為にもこんなところで立ち止まるわけにはいかない」
銀城に刀を突き付ける。
「その為に私は全てを捨てたのだから」
笑みを張り付けたまま、目は狂気の色を宿していた。
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