第38章 Oretis-償いの咎-
「償いのためだ」
「償い?」
「俺はあいつに最低な事をしちまった。あいつをボロボロになるまで傷付けた…許されなくて当然の事をした。けど…そんな最低な事をした俺を…あいつは笑って許してくれたんだ」
“私も色々騙してたし、お互い様ってことで許し合おうよ”
「随分と都合が良いんだね」
「俺もそう思うぜ」
「普通は自分を傷付けた奴を許せないだろう」
「あいつは…」
“私と友達になってよ”
“そうすれば全て水に流す”
「俺があいつにした全ての仕打ちは“友達同士の喧嘩”ってことで許してやるって言ったんだ」
「あんたは本当に最低な事をしたんだね」
「ああ…あの頃の俺を殴ってやりてえ」
目を閉じて後悔の表情を浮かべる。
「“俺のダチに何してんだ”ってな」
恋次は今でも忘れられないという。
彼女が、どれだけ優しい人なのかを─────。
「あいつは優しいから友達になれば全てを許すと言った」
“こう見えて私は友達を大事にする主義なんだ”
“だからキミ達が私にした仕打ちは友達同士の喧嘩ってことで許してあげる”
「けど俺は自分のしたことがどうしても許せなかった。そしたらあいつ────……」
“ずっと友達でいてよ”
“それが私に対するキミの償いだ”
「!!」
目を見開いてジャッキーは驚く。
「あの娘が…そう言ったのかい?」
「ああ…っとに…どんだけ良い奴なんだよ」
恋次は感謝をしつつも、苦笑を浮かべる。
「だから俺はずっと友達でいようと決めた」
「…“ずっと友達でいること”があの娘への償いか」
「あいつには恩を感じてるんだ。
こんな俺を…笑って許してくれたんだからな」
「友達やめたいと思ったことはないのかい?」
「俺があいつと友達をやめたら、それこそあいつは俺を許さねえだろうな」
「…なるほどね」
「!」
「あの娘があんた達に向ける眼差しは優しい。
とても友達を大事にしてるんだろう」
ジャッキーは小さく笑う。
「けど気を付けな」
だがすぐに真剣な表情を見せる。
「あの娘は…危険だよ」
「!」
「よく見ておくんだね」
「どういう…」
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