第38章 Oretis-償いの咎-
意識を失ったジャッキーを背に抱え、安全な場所まで運ぶと地面に下ろした。
「…やれやれ…こいつを倒したらここから出られると思ったんだが…どうもどこにも出口が開く気配は無えな…」
「…あたしがまだ生きてるからじゃない…?」
「もう意識が戻ったのかよ。頑丈な女だな」
「意識は戻ったけど動けるまでにはまだかかるね。止め刺すなら今だよ」
「うるせえよ。そうしなきゃ出られねえと決まった訳でもあるめえし、頭使えよ。他にも出る方法の一つや二つあんだろ」
「…どうだかね。雪緒のすることだ…。
あたしにゃそこまで解らないよ…」
冷たい雨が二人を濡らす。
「…さっきの質問だけどよ」
「!」
「“自分より強い女に会った事は”って聞いたろ」
「ああ…そんな話もしたね…」
「あるぜ」
「へぇ…そりゃまたどんな奴だい。あんたより強いって事は…相当な実力者なんだろう?」
「お前らも既に会ってんだろ」
「?」
「仁科梨央だよ」
「!!」
ジャッキーは驚いた表情を浮かべる。
「今も思い出すだけで罪悪感に犯されるが…昔、勝負して背負い投げ一本で俺に勝った女だ」
「あんたみたいなガタイの良い男をあの娘が?」
「小柄に見えて実はすげぇ強えんだぜ。
友達想いで…めちゃくちゃ優しい奴だ」
「…何者なんだい、あの娘は」
「零番隊隊長だ」
「違う。そんな事を聞いてるんじゃない」
「!」
「“あの娘は本当に…人なのかい”?」
「どういう意味だ」
「まるで…化け物みたいだ」
「仲間を侮辱すると許さねえぜ」
眉間を寄せて顔をしかめる恋次。
「悪いね…あんたの友達を侮辱したつもりはないんだけど…あたしには本当にそう感じたのさ。“ああこの子は異常だ…”ってね…」
「………………」
「あの娘は…恐ろしい子だよ。力を持て余してる。そして自分が壊れるかもしれないのに無理やり力を引き出そうとしてる。仲間を護る為に強くなりたいんだろうが…それでもあの娘は普通じゃない」
ジャッキーは怯えた眼をする。
「ねぇあんた…何であの娘の友達やってんだい?」
恋次はジャッキーから視線を外して空を見上げた。
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