第38章 Oretis-償いの咎-
雨が降り頻る中、恋次はジャッキーと距離をとって対峙していた。
「来ないのかい」
「女相手にこっちから手なんか出せるかよ」
「大した紳士だね。だけど世界が狭いんじゃない。自分より強い女に会った事は?」
「強かろうが弱かろうが関係無えよ。
先に手は出さねえ」
「そう、じゃあ狭いのは世界じゃなくて了見て事ね」
「そのバイクの部品みてえなのは何だ?
唸らせると力が昇がるのか?」
「これかい?」
右肩にバイクのマフラーのような装甲が装着されている。
「驚いたね、死神がバイクを知ってんのかい」
「ちょっと前に檜佐木センパイが現世で買って帰って瀞霊廷ン中で乗り回してスゲー怒られてたからな。で、何の為についてんだ」
「手は出さないんだろ?じゃあ黙って見てな。ただ剣くらいは抜いた方が良い、了見の狭さを後悔したくないならね」
装甲から黒い液体のようなモノが噴出してジャッキーの白い服を汚す。
「あたしの『ダーディ・ブーツ』は汚れれば汚れる程強くなる!それはブーツだけの話じゃない…」
全身が真っ黒に染まり、力が上がる。
「身に纏う完現術の全てについた汚れがあたしの力になるんだ!」
ジャッキーは片足を上げた。
「剣、抜いといた方が良いよ」
地を蹴って瞬時に恋次の背後に移動し、足を振りかぶる。
汚れたことで蹴りの威力が増したジャッキーの足を恋次は態勢を低くして躱す。
「いい反応だね!でもまだまだ!!」
胸辺りを蹴られた恋次の身体は浮き上がり、数メートル吹き飛ぶ。
「(入った、終わりだ)」
手応えを感じ、ジャッキーは勝利を確信する。
「!」
だが、恋次は持ち堪えた。
「…良し、“もう分かった”。
次も受けてやるよ、来い」
その言葉にジャッキーは激しく激昂した。
「だからそういう所を後悔するって言ってんだよ!!!」
もう一度恋次に蹴りを食らわすが今度は腕一本で簡単に受け止められてしまう。
驚くジャッキーに恋次は腰に携帯している鞘から刀を引き抜いて柄の部分を使い、ジャッキーの腹部を突き上げた。
「俺はこの17ヶ月、“藍染と戦えるように”鍛錬したんだ。男だろうが女だろうが、おめえらじゃ足りねえんだよ」
.