第38章 Oretis-償いの咎-
目の前に広がるのは見覚えのある景色だった。
「これは───…空座町の景色か?」
「面白えだろ?お前が戦いやすいフィールドにしてやったんだ。良かったな、1対1で俺とやれるぜ」
「──悪いが3対1だ」
「やっほー」
「梨央」
雨竜の背後からひょっこりと顔だけを覗かせる。
「石田…お前ケガは…」
「朽木さんが治してくれた。応急処置だけどね。…黒崎、僕は君に謝っておかなきゃいけない…」
「!」
「朽木さんを助けて尸魂界から戻った時…君から代行証の話を聞かされて僕は“君の前にも死神代行が存在し、その代行は恐らく行方をくらませた”と考えていた」
雨竜は後悔の言葉を口にする。
「生きているなら君に教えるべきだし死んでいるならその理由くらいは教えるべきだ。どちらもしなかったということは尸魂界も把握できていないんじゃないか、と…考えた時に言うべきだった。こんな事になってしまうなんて…」
「…石田…セイ!!」
「痛い!!」
「痛そ〜」
「く…黒崎お前っ…」
「カンケーねーよ!そん時聞いたって用心のしようも無えしどうせ俺もすぐに忘れんだろ!」
「そうだよ雨竜くん、その時聞いたってすぐ忘れるよ。だっていっちーだよ?」
「オイそりゃどういう意味だ」
「要するにポンコツってコト☆」
「誰がポンコツだ!!」
茶化すように笑って言えば一護は怒る。
「つーか、すんだこといつまでもグチグチ気にしてんじゃねーよ!ボケ!!」
「…君だって似たようなもんだろ」
「何か言ったか?」
「別に」
「ちょっとー敵を前にして喧嘩はやめてよ」
「してねーよ!」
「(…知られてしまうだろうか。)」
初代死神代行が行方をくらませた理由を。
その理由を知った時
彼は後悔するだろうか
もし…全てを知られてしまえば
あの人の思いが─────……
「いくぜ足手まといになんなよ!
あとメガネ拭いとけ!」
「メガネ関係なくない?」
「うっせ!」
きっと彼は気付いている
「雨竜くん」
「!」
「気軽に行こうよ」
「…そうだね」
雨竜は口許を上げて小さく笑った。
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