第36章 Orbis-交わる世界-
「どうしたの!?久しぶりだね!!」
「別件で現世に来たんだ。それより織姫ちゃん、こんな時間に何をしてるの?女の子が一人で夜道を歩くのは危険だよ」
「梨央ちゃんも女の子だよ?」
「私は襲われても撃退できる自信があるから大丈夫」
「強いもんね!」
「空手有段者には負けるよ」
ほんわかとした空気が流れる。
そしてハッとした織姫が慌てた様子で梨央に言う。
「そうだ梨央ちゃん!!
黒崎くん見かけなかった!?」
「いや…見かけてないけど…どうしたの?」
「黒崎くん…月島さんを殴って逃げちゃったの」
「は?何でいっちーが月島を殴るの?」
「え?」
「あの二人…接触してないはずだよね?」
「何言ってるの梨央ちゃん」
織姫は可笑しそうに笑う。
「月島さんは黒崎くんの従兄弟だよ〜」
「ちょっと待って」
「ん?」
「え…何…どういうこと…?
月島と彼が…従兄弟?」
「うん」
「あ…あー…なるほど…」
「どうしたの?」
「私もいっちーを見つけたら“月島さん”に謝るように伝えるよ。だから織姫ちゃんは家に帰った方がいい」
「でも…」
「たつきちゃんが心配するよ」
「!」
「ね?」
「…うん!」
ホッと安堵する。
「梨央ちゃん」
「何?」
「おかえり!」
「ただいま」
二人は再会を喜び合う。
「その髪飾り…すっごく可愛いね!」
「ありがとう…とても大事なんだ」
「梨央ちゃんの緑の髪と青い瞳をイメージして作ったみたいで似合ってる」
「うん…私もすっごく可愛いと思う」
梨央は少し頬を赤く染めて笑う。
「じゃあ…あたし行くね」
「送って行こうか?」
「すぐ近くだし大丈夫だよ」
「そっか…じゃあまたね」
「うん!またね!」
大きく手を振って織姫の背中を見送る。
そして完全に姿が見えなくなると浮かべていた笑みを消して無表情で冷たい眼を宿す。
「忠告を無視した罰を受けてもらわないと」
その声はとても冷たかった。
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